- ナノ -
ショタコンじゃないです


「………」
「………」

おっす、おら雪乃!わくわくすっぞ!…すいませんふざけました。全然わくわくしない状況なのについ脳が逃避を…。私はどうしようと困惑していた。自分の足にはひっしと掴まって一向に離れようとしてくれない幼児が張り付いている。困ったな、と同じように忍服を着た男の人も頭を掻いていた。

事の起こりはほんの数分前。私は商店街に来ていた。それはもう一ニを争う程重要な任務を達成する為に。即刻目標を補足、かつ抹殺せねば私の今後の人生に大いに関わる敵が現れたのだ。そう、そいつはある日突然やってきた。ヤツは私が気が付かぬ間に住処をこさえ、自らの種を繁栄させんと虎視眈々とその機会を狙っているのだ。……うん、つまりGだね。台所にGが出たの。たった二言で済ませられる説明をわざわざ小難しく言ってみたのだが、飽きたわ。

まーつまりそのGを滅却しようと思ってしゅーってするやつを買いに来たんだよね。あとゴキ●リホイゴホイみたいなやつ?あんのかな、木の葉にって思ったんだけど、あったわ。普通にあったわ。あれに悩まされているのはいかに異世界といえど同じらしい。これで「目が合ったヤツ(G)は…皆殺しだ」…我愛羅的にね。砂漠葬送は中身がぶちゅってなるから絶対やらねーけどネ。

それはさておき、事件はしゅーってやつを買った後に起こった。レジで支払いを終えたとき何やら店先が煩くて、何かあったのかなとひょいと顔を覗かせた瞬間、小さな男の子とばちりと目が合った。黒髪の可愛らしい男の子だ。一歳くらいかな…?木の葉の子どもってやっぱ忍者の素質的に成長が早かったりするんだろうか?まいっか。それにしてもめんこいなァ何処の子かなァと思う間もなく、その子ががばりと私の足にしがみついてきたのだ。しかも何て言ったと思う?

「……かあしゃん」

だよ?!可愛い、舌足らず可愛い!!って一瞬思ったけど、全部吹き飛んだわ!か、かかかかかか母さん?!産んだ覚えなんてないぞ!?シカマルを産むかもしれない危機に瀕しているというのに、この上他の男の子なんて産もうと思うわけないじゃないか!頭上に大量のクエスチョンマークを浮かべる私を他所に「ああ良かった…迷子じゃなかったのか」と納得した表情の忍さん。オイコラ待て、私はまだ二十歳前だ。一、二歳児の親に見えるってのか。いや、ありえなくはないだろうけど、でも似てるとこなんて黒髪くらいじゃん!!

「違います。人違いです」
「え?でも…」
「小さい子なんですから、間違うことくらいあるでしょう。とにかく、私の子ではありません」
「そ、それは失礼なことを…」

いや、それは別にいいけどね。母親と逸れて不安なのだろう、男の子は私を母親と勘違いしてしまい、ぎゅーっと抱き着いて離れてくれない。声聞け、声を。君のお母さんとは違う声だと思うよ?というより、この子めっちゃ可愛いからお母さんもめちゃくちゃ美人なのだろうと思う。私なんかとは似ても似つかないよね?!お母さんに失礼じゃない?!

おいおい、マジ勘弁してよ…と困り果ててしまった次第だ。迷子の迷子の男の子、貴方のおうちは何処ですか?!切実に。名前を聞いても黙まり、おうちを聞いても黙まり。「…」黙ってばかりにいる男の子。…私も犬のおまわりさんみたいに泣きたいよ。Gのしゅーってやつ買いに来ただのなのに。

「よう、雪乃じゃねェか。何やってんだ?」

やっべ、面倒くさいの来たよ。タイミング良過ぎじゃない?私はげんなりしながら笑顔で手を振ってくるシカクさんを見た。…よく会うけど、ストーカーじゃないよね?たとえそうでも私はもう驚かないぞ!

「……何だ、そのガキ」

あれだろ、あんたどうせさ、

「………まさかお前の隠し子、か……?」

ほらやっぱりね。面白くないって!お決まりのボケかますなよ!シカクさん一体私の何を見てたわけ!?シカクさんに付き纏われている状況で他の男の人と交際できるか?お腹大きくなったことあった?第一、出来ちゃった結婚はしないからね!

「違います」
「そ、そうだよな…あービビったぜ」

私はあなたの思考回路にびっくりだわ。

「…つーかこのガキ…うちはのガキじゃねェか?」
「え?」
「ほら、フガクんところにこのくらいのガキがいるんだよ。おれも生まれたときに顔出したしな…何となくミコトに似てんじゃねェか?」

そういえば、前に聞いた。ナルトの親世代は大抵同期か一、二期違うだけらしい。つまりほぼ全員顔見知り。原作のメンバーの親達も同じようにスリーマンセルを組んでたりしていたらしい。へーフガクさんとこの。ミコトさんに似てるの。うちはのガキかァ。……待て。ぼへーっとした頭を回転させて、一つ一つの情報を組み合わせていく。えーっと原作であの人は確か二十歳いってなかったから…逆算して考えると今は………うん、確かにこんくらいだ。……てことは、もしかしなくても……。

「………イタチくん?」
「………」

反応を示さなかった男の子が顔を上げて、くりんと小首を傾げる。ぎゃわいい…!じゃないや、え?!マジ?!うちはイタチかよおおおおォォおお!冗談止めろよォお!お団子中毒ブラコン天才青年?!未来の暁メンバー?!嘘だっ!「ナンセンスだ」とかクールにいうあのイタチがこんなに可愛いわけないだろ!天使じゃないか!この天使が里の為とはいえうちは一族虐殺するのか!よし今日から君は撲殺天使イタチくんだ!

「何だ、知ってんのか?」
「知っているというか、知らないというか」
「何だそりゃ」

撲殺天使イタチ君はじっとこちらを見つめてきている。あー、ミコトさんと間違えてるってこと?いやいやミコトさんめっちゃ美人じゃない。やっぱ失礼だって。確かに黒髪は同じだけど…まあいっか。正体が判明したから、家まで送っていくこともできるよね。

「私、この子を家に送っていきます」
「え…いえそんな、悪いですよ」
「構いません。このまま離れてくれそうにありませんし」

恐縮して、一緒についてくると言ってくれる忍者さん。心配するなかれ。強力なボディガードがいるからね。

「ならおれが「シカクさん」…ん?」
「ご迷惑でなければ、一緒に来て頂けますか?」
「お…おお?お……おお!!」
「ありがとうございます」

お、しか言わなかったなこの人。全部ニュアンスで何が言いたいか伝わったけど。多分、というか絶対一緒についてくると言いそうだったから先手を打ってみた。一緒に来て下さいと断定しなかったのは一応の配慮だ。忙しいかもしれないから。シカクさんはきょとんと目を丸くして、瞬きを繰り返し、後、呆けから脱出。首を上下に振った。…おもしれー。

「……?」
「一緒におうちに帰ろう?手、握る?」

不思議そうなイタチくんは差し出した手をしばらくじっと見つめ、それからこくんと頷いた。紅葉のように小さな手が重ねられる。子供体温!!ぎゃわいい!!食べちゃいたいくらい可愛いっ!ともすればにやけてしまいそうな頬を必死で引き締めて歩き始めた。

「おれとは繋いでくれねェのか?」
「………」
「……悪かった。冗談だ」

寝言は寝て言おうね☆

それからナルトの歌「悲しみをやさしさ」にを口ずさみながら私達三人はうちは一族の居住地を目指した。すぐに覚えたのか同じように歌ってくれるイタチくんが可愛かったです。まる。「仲の良い親子ねー」というおばさんの言葉をきいてニヤけるシカクさんが怖かったです。まる。うちは一族に着くとミコトさんとなんとクシナさんがイタチくんを探していて、びっくりしました。まる。期せずして友達になってしまいました。まる。


…………あれ?作文?じゃなくてェエエエエ!
ゴキブリのしゅー買いに来ただけで登場人物三人と知り合いになっちゃったじゃないか!!!………とほほ。




前/14/

戻る