臨正

2010/08/16 16:17

「ああああ!もう!ウザい!」

大声で叫ぶ正臣。
手元にあるケータイはメール機能を呼び出してあり、さらに言えば一通のメールが開かれていた。

『君は俺を愛してる?』

一言、それだけ。

「何時だと思ってんだよ・・・」

時計の短い針は3を指しており、外はまだ暗い。こんな時間にこんなしょうもないメールを送るやつなど正臣は一人しか知らない。

「最悪、」

ピピピ、と操作して電源を切った。

そしてこれから寝る時は電源を切るようにしよう、と心に決めながら再び夢の世界へと落ちていった。


所変わって新宿。
高級マンションの最上階では、一人の男がニヤついていた。

「ほーんと、正臣くんは素直じゃないよね。」

開かれたケータイには一言ウザい、という文字。

「愛してない、じゃなくてウザい、って返すところを見ると嘘は吐けないらしいね。」

クルクル椅子を回す男は頬を緩めてケータイを凝視した。

「ウザい=何でわざわざ改まってそんなこと言わなくちゃならないんだ、で良いんだよね?」

これだから君は面白い。


回転のスピードを増した椅子は、ギシリ、と音をたてるのだった。

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