臨リンのような良く分からない何か

2010/10/25 18:24

※折原=サイケ

人間の声は嫌いだ。
それぞれの感情が剥きだしになっていて穢らわしい。
長い期間人間を観察し、利用してきた俺にとっては人の感情程度簡単に読みとれるものだ。
それなのに人間達は自分をただ理想の形に仕上げたいがために声を張り上げて罵ってみたり、甘えた声で誘惑したり、本当に愚かだと思った。
昔の俺なら、そんな所が愛おしいだなんて言っていただろうけれど、俺はもう人間を愛せそうにはない。
だから、外との関係を全て打ち切り家に引きこもろうとした。誰の声も聞かなくて良いように準備を整えて。
けれどもそれをするには折原臨也という存在は露出が過ぎたらしい。家までやってくる取り巻きや恨みを持った者の声が頭に響いた。
だから。
俺は常にヘッドホンを付けることにしたんだ。流れる曲は常に機械音か合奏曲。そして、ヘッドホンを身につけたまま外へと出た。話しかけられたら自らをサイケと名乗り折原臨也という人間を塗り替えていっている。

そしてある時俺は出会ったのだ。
そう、ボーカロイドという存在に。今までまるで関わりの無かった文明の発達に初めて心から感謝する。
肉声に近い、けれども感情の籠もらない音が何とも心地よくて、いつの間にやらのめり込んでいった。
そんな中、一つのボーカロイドに酷く心を惹かれ始める。曲もそうだったが、それよりもただただ音が耳に心地よかったのだ。
彼と出会ってから、俺は人間達の酷く爛れた音を聞いた後には必ず彼の歌を聞くようになった。
黒ずんだ何かが綺麗さっぱり流されるような感じが気持ちよかったのである。

そんな彼の名前はリンダ。
今回は、元の声を一般人の物としたと聞いた。
透き通るようなテノールが特徴的な、中高生ぐらいの男の声。
そんな彼の声は、何か大切だった人の声に良く似ているような気がしたが、分からないままでも良いだろうと忘れた振りをしたのだった。














続くかも

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