2010/08/16 16:15 がたり、と音がして重たいドアが開く。 外からの光で逆光になっているため良く見えないが、背格好や服の着こなし、そして時間帯から大体の予想はついた。 「・・・帰れよ」 口から漏れるのは思い描いていたより幾分かか弱い声。 「連れないですねぇ、正臣先輩?」 ニヤリと笑ったのだろう。少なくとも正臣にはそう見えた。 「お前の先輩になった覚えはねえからな、俺は・・・」 苦々しく、本当に苦々しく舌打ちをした正臣の頬をするりと撫でられる距離まで近づいてきていた青葉はクスリと笑う。 「でも、一応来良学園のOBでしょう?それに、僕が居なければ帝人先輩のことも知れませんよ?」 頬を何度も指で往復して、愛撫するかのように耳を撫でる。くすぐったいというより嫌悪感が襲いかかってきた正臣が身震いしても、青葉は止めようとはしなかった。 「ほんと、やめ・・・」 「ねぇ先輩?」 言葉を遮るように紡ぎ出されたその言葉に思わず口を閉じる。つつー、と親指で唇をなぞる青葉の指が唐突に止まった。 「もう僕のものになってくださいよ」 「嫌」 「ほんと、連れないなぁ・・・」 今の笑顔は何時もよりも曇っていたなぁ、などと考えつつ、正臣は目を閉じるのだ。次の瞬間訪れるであろう、柔らかな感触を思い出しながら。 |