類は友を呼ぶ?

山本と美香



『やっと終わったあー!次は体育だ!』

「おーい山中まだ終礼の挨拶してないぞ」

『やだ先生たら細かいなあ!僕のダーリンはそんなことしないのに』

「須藤、嫁の躾ぐらいきちんとしておけ」

『狽ソょ、ダーリン=あたしって方程式が先生の中にも確立してるんですか!?』

「よかったね葉樹!学校の公認カップルだよ!』

『よくないわどアホ!』

『迫竄スい!』


そんなショートコントをやっていたからなのか、先生が「宿題忘れんなよ〜」と告げてから呆れて教室を出て行く。
体操服を持って、目指すは更衣室!



「ははっ、美香は相変わらず元気だな!」

『タケちゃん!だって体育ってテンションあがらない?』

「同感なのな〜」

『だよねー! っと、着替えてこなきゃ!また後でグラウンドでね』

「おう!」

『ほら、行くよ葉樹!』

『襟引っ張んないでよ苦しい!』



ぎゃーぎゃー騒ぎながら教室を出て行く2人を見ながら、山本の席にやってくる沢田。


「山本っていつの間に山中さんと仲良くなったの?」

「んーいつだったっけ?」

「矧oえてないの!?」

「はは、まあ自然にじゃね?」


細かいことは気にすんなよ!と笑う山本を見て、あ、なんか山中さんと似てるかも、と思った沢田。
アレだ、類は友を呼ぶってヤツ。


「そんなヤツほっといてはやく着替えましょう、10代目」

「おっ、獄寺がやる気なのなー」

「違ぇよ!10代目が遅刻されたら大変だろうが!」

「あ、あはははは……」


いつの間にやら「いつも通り」のやりとりとして見慣れてしまった山本と獄寺くんの言い合いを尻目に、それでもこの「日常」がちょっと嬉しかったり。
そんなことを思いつつ、いつまでたっても好きになれない体育を受けるために俺は体操着に袖を通した。










カキ―――――――――――――――ン。

グラウンドに響き渡る金属音。

「へへっ、悪ィな」


使っているのは木製バットの筈なのに、なぜあんな音がするのだろうという疑問はさておき。
野球部のエースである山本武は、その持前の運動神経の良さを、得意の野球でこれでもかというくらい遺憾なく発揮していた。


「おい山本ーちょっとは手加減してくれよー!」


相手チームからの野次が飛ぶ。
そんな中、いつの間にやらやってきたのか、メットを被りバットを握る姿がひとつ。


『タケちゃん、僕と勝負!』

「んなーーーっ、美香ちゃん!?」


いつの間にここに!?てかなんで山本に勝負挑んでるの!!?
それに今山本は攻め側なんだけど!?

・・・うん、突っ込みどころ満載すぎて疲れてきた。


『あっちゃー…ごめんね沢田くん。美香が迷惑かけて』

「須藤さん!山中さん止めなくていいの!?」

『うーん、あの子山本くんと野球勝負出来るの楽しみにしてたし…多分一回やらないと無理、かな』


山中さんの後を追ってきてこっちに来たのであろう須藤さんに尋ねてみれば、苦笑いとともにそんな答えが返ってきた。


「お、やる気だな美香。いーぜ、勝負だ!」


根っからのスポーツ少年で野球一筋が挑まれた勝負を断るはずもなく。
クラスメイトも面白そうだ、ってことで賛成して、あっという間に対決の場が整ってしまった。


「まずはかるーく投げるのな!」


そう宣言して投げられたボールは、剛速球で山中さんの横を通り過ぎていった。


「そうじゃん!山本手加減とか出来ないんだった―――!!!」

『ひゅう、かっくいー』

「狽ネんでそんな冷静なの!?」


親友がピンチなんだよ!?


『まあまあ、みててよ』


きっと、大丈夫だから。


にこりと信頼した笑みを浮かべる須藤さんをみて、ちょっと気持ちは落ち着いたけど、やっぱ不安がぬぐい切ることは出来なくて。


『ワオ、やっぱり速いねタケちゃん!』

「へへ、次行くぜ!」


2球目も見送り、ツーストライク。
迎えた3球目。
(ちなみに1、2球目の影響で後ろのフェンスが抉れてるのは見ないフリをしておこうと思う)


「悪いが真剣勝負、3ストライクとらせてもらうぜ!」


山本が意気込んで投げたボールは凄いスピードで加速していく。


ぼきっ。


「・・・え?」

『あっちゃー木製バット折れちゃった』


勝負は山中さんの持っていた木製バットが折れて、ぽてぽてとボールが転がって終わった、んだけど。


「あいつ、山本のボールを捉えた・・・?」


クラスメイトのだれかが呟いた言葉に、ざわざわしていた空気が一気に沸騰する。


「山中さん凄い・・・」

『ね、言ったでしょ?大丈夫だって』


自分のことのように誇らしげに胸を張る須藤さんに、「・・・うん、そうだね」と返す。



「おお、やっぱセンスあるな美香!」

『そーゆータケちゃんはやっぱりすごい!手が痺れてるしなんなら少し皮めくれたよ〜』

「悪ィ悪ィ!ちょっとみせてみな、」


そういって山中さんの少し負傷した手のひらをみて、なんの戸惑いもなくぺろり、と傷口を舐めていく山本をみて、再びグラウンドが大絶叫に包まれたのは言うまでもないだろう。


『え、ちょ、タケちゃん!!??』

「ん、ちょっと待ってろ。消毒してから保健室いこーぜ」

『ちょ、大丈夫だから・・・っっ』


山本―――!?山中さんの顔真っ赤だよ!?
なんていうかエロい!みてる俺らまで恥ずかしくなってくるんだけど!!


っ、(殺気!?)」


『ねえ、山本くん。喧嘩売ってるなら、買うよ?』


にっこり。
天使のような悪魔の微笑みを浮かべた須藤さんからにじみ出ている隠しきれていない怒りと、持ち前の天然と良心から消毒という名のエロさ満載の行為を続ける山本と、山本の行動に照れているのと漏れそうになる声を抑えるのに必死の山中さんとで、その後体育の時間が潰れたのは言うまでもないことだよね。








天然の皮を被った策士
ケガさせたかった訳じゃねーけど、チャンスは最大限活用しねーと男が鈍る、ってモンなのな!




『美香ってなんであんなイケメンほいほいで危険なやつほいほいなの・・・可愛くて性格も良くてスポーツも出来るからか、知ってた』

「博ゥ己完結してる―――!?」

『まあ、そう素直に認めないけど。てことで沢田くんも山本くんも、簡単には美香と付き合えると思わないでね(にっこり)』


「おう、望むところだぜ!」

「(あれ、なんかさりげなく俺も巻き込まれた!?)」



『タケちゃーん、今度リベンジ挑ませてね!』

「おう、いつでもうけるぜ!」

『わーいタケちゃんありがとう!大好き!』

「はは、俺も美香のこと大好きなのなー」

『へへ、うれしい!!』



『もう、もう・・・っなんあのあの子一級恋愛フラグ建築士(無自覚)なのっ!?可愛いけど!好きだけど!!』

「・・・どんまい(なんか俺と同じ不憫そうな匂いがする…)」




「ふ、やっぱり美香のヤツファミリーに欲しい人材だな」





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