黒子くんってさ。


***黒子と葉樹***
内容的には黒子→美香な話。





「なんで僕が主人公なのに最初の話が火神くんと美香さんなんですか普通こういうのって主人公が最優先されるんじゃないんですか他のお話は主人公が最初じゃないですか何故なんですそもそも僕のほうが美香さんのこと好きなのに僕が影だからですかそうなんですか」

『ちょ、黒子くん落ち着いて…っていうか最初からメタ発言やめよう!!?』


あとさらりと美香のこと好きだって公言したよねほんと儚げ美少年を装ったバスケ界上位を争う男前だなこいつ。


「僕は葉樹さんより美香さんとお話したいです」

『いっそすがすがしい程にあたしに喧嘩売ってくるじゃん黒子くん』


部活帰りに1人ストバスコートで練習している黒子くんを見つけて、相手が居た方が盛り上がるから、っていう理由で1on1をしていた真っ最中だったけど。
黒子くんの挑発ともとれる言葉にイラっとしたからドリブルで一気に加速してからのバックステップで緩急つけて、そのまま3Pシュートを決めてやった。


『っし!』

「あっ・・・。やっぱり巧いですね葉樹さん」

負けず嫌いの黒子くんは、心底悔しそうな顔をしながらも、素直に今のプレイを褒めてくれる。
そーゆーとこは好感持てるのになぁ。


『ありがと。でもまだまだだよ。この前青峰くんにこてんぱんにやられたもん』

「(青峰くんがストバスとはいえ試合を挑むことの凄さに彼女は気付いていないんでしょうか…)」

『…なにその信じられないようなモノをみる眼』


よくわかんないけどバカにされてる感じだけは伝わった。


「それより、疲れました。少し休憩しましょう」

『ん、それもそうだね』


にしても黒子くんってほんと…女子のあたしより体力ないのにレギュラーって、イレギュラーな存在すぎるよね。


『そういえば、美香のどこに惚れたの?黒子くんは』

「・・・唐突すぎませんか」


ベンチに座って水分補給をしていた黒子くんは、ただでさえ丸い目を更に丸くしてきょとん、としている。
なにその2号そっくりな顔かわいい。

『んにゃ、実は前から気になっててさ。てか惚れてるとこ否定しないあたりほんと黒子くん男前』


もちろん美香は女のあたしから見てもかわいい。
明るく元気な彼女は一緒に居ればこちらまで楽しい気持ちにさせてくれるし、いつも突拍子もないことを思いつくし行動するから、なにより飽きない。
そして時折天然であざとい。

でも、黒子くんが惚れた理由はそれだけじゃない気がしてたんだよね。


「・・・見つけてくれたから、でしょうか」

『ふむ?』

「もちろん、伊月先輩や高尾くんや赤司くんは優れた眼でいち早く僕を見付けてくれますし、青峰くんや火神くんも持ち前の野生の勘、誠凛の皆さんも最近は慣れてきたのか僕を見付けてくれることが多くなりました」


もちろんそれは凄く嬉しいです。と前置きをしつつ。


「それに比べて美香さんは、常に僕が見えているわけではありません。驚かせてしまうことも多々あります。でも。僕が見付けて欲しいとき―――――例えば、1人で落ち込んでいるときになんかは必ず僕のことを見付けて、声をかけてくださるんです。『大丈夫、てっちゃん』と」



もちろんそれだけじゃなく、彼女がマネージャーとして僕ら部員のために一生懸命動いてくれていることにも好感が持てるし、キセキの彼らに偏見を抱かず1人の人として接してくれたのも嬉しかった。いつも笑顔な彼女はとびきり可愛いし、でも偶に見せる泣き顔にはぞくぞくする。それから―――、と、更に続きそうな話を慌ててぶった切る。


『黒子くんが美香のこと大好きなのは伝わった!あと最後ちょっと危ない発言入ってたよね!?』

「はて、なんのことでしょう」

『真顔でしらばっくれやがったこいつ・・・』


「もちろん僕がLOVEの意味で大好きで、惚れているのは美香さんです」

『うん、痛いほど伝わったよ……』

「でも、」


一呼吸置いて、くい、と顎を持ち上げられ、目線を合わせられる。
ああ、バスケ部の中じゃ一番小さい彼も普通に160cm以上あって、あたしより背が高いんだなぁ、なんて頭の片隅の冷静な部分が分析する。



「ひとりのバスケプレイヤーとして、僕は葉樹さんのバスケスタイルにも惚れていますよ」


もちろん、葉樹さん自身にも。そう言って、ただでさえ美少年な彼が普段の無表情を崩して綺麗に華が開いたようにふわりと笑うから。


『っ、』

「おや、顔が真っ赤ですよ」

『黙れこの確信犯―――っ!』

「バスケットボールで攻撃しないでください危ないです」

『イグナイトで攻撃しまくってる奴にだけは言われたくなかった!』


思いっきり赤面してしまったあたしは、きっと彼には勝てないんだと思う。















彼の思いがあまりにも真っすぐで
邪魔しちゃダメだなぁ、なんて思ってしまった時点であたしの負け。















『・・・にしても、あたしも結構黒子くんのこと見付けられるほうだと思うんだけど』

「何言ってるんですか。だって葉樹さんは護らなくても1人で生きていけそうじゃないですか」

『・・・にゃろう』

「(本当は初めて出逢った時から美香さんに心奪われていた、なんて口が裂けても教えてあげませんけど)」