かがみんってさ。


火神と美香

『ねーかがみんってさ、』


家の近くの公園で、一人で架空の敵を相手にドリブルでかわしワンハンドダンクでシュートを決める。

おお、相変わらず高いな、なんて今日何度目かわからないシュートをクラスメート兼同じバスケ部員である(とはいっても僕はマネージャーだけど)火神が決めたところで、声をかけてみた。


「んだよ」


つかそのかがみんってなんだよ!と突っ込みながら僕の座っていたベンチに来たかがみんに、えーだって可愛いじゃん、タオルとドリンクを渡しながらそう返せば呼称に可愛さなんて求めてねえ!つーか俺そもそも男だし可愛さとか必要ねぇし!と返されてしまった。
さっちゃんと同じ呼び方なのに!!

……と、今聞きたいのはそれじゃなくて。


『かがみんて、葉樹のことどう思ってるの?』

「狽ヤっ!?」

『うわ、きたな!』


よっぽど喉が渇いたのだろう、勢いよくドリンクを飲んでいたかがみんは、僕の質問に盛大にドリンクを噴出した。


「どうって、どういう意味だよ」


タオルで口を拭いながら、眉間にしわを寄せるかがみん。
そんな仕草でさえ絵になってしまう気がするから、やはりバスケの才能だけじゃなくて顔面偏差値も文句無しに高くてモテるよな、こいつだなんて思ってしまった。
びっくり枝型割れ眉毛だけど。

キセキといいかがみんといい、世の中不公平だ。
少しくらい僕にも分けてくれ!と本気で思うぞ。
カラフル厨二病は患いたくないけど。


『んーん?まあいろんな意味があるけどさ、じゃあとりあえず…バスケ選手として?』


アイツは僕とは違って、マネージャーじゃなくて女子バスケットボール部所属だ。
もともとスポーツ観戦も好きだが見るよりやりたい派、なにより動いてないと体力バカで運動バカの葉樹は動きたくてうずうずしだすから鬱陶しい。

でもそんな葉樹は運動神経もいいから、楽しそうにバスケをやってるのをよく見かける。


「そうだな…俺には勝てねぇと思うけど」

『いやそれは当たり前だよ!』


バスケットボール界でも注目されつつある火神に葉樹が勝つようなら、次元が違いすぎて僕もうアイツの友達やってられない。だってレベル感的にはキセキの世代くらいってことじゃん、なにそれそんな女子怖い。
つか今さりげにかがみん青くんみたいな発言しなかった?


「でも俺、アイツのバスケ好きだな」


なんだかすっげー楽しそうで!そういいながら嬉しそうににかりと笑うかがみんを見て、ああそうだコイツもバスケ馬鹿のひとりだったと思い出す。


『んじゃ、友人として』

「そーだな、あいつ伊月先輩とかフリみたいに周りみるの得意だからよく気が付く、と思う。勉強も出来っから助かってるしな。それに聞き上手だし…あーあれだ、緑間んとこの黒子のライバルと何となく似てるとこある気がする」


勘だけどな、と付け足すかがみん。


『……やっぱ鋭いなー』

「ん?なんか言ったか?」

『んにゃ、こっちの話』


和くんも葉樹も、他人の強がりはすぐ見抜くくせに自分の心には鉄壁のガードをかけて。
誤魔化すのだって上手いから、彼らの痛みに気付くのは一苦労なんだよねぇ〜



『…んじゃあ、女の子として』

「・・・・・・」


さり気無く本題に差し掛かった途端、無言になる。
え、そんな難しい質問したっけ??



「んっと、よくわかんねぇけど」


そう一言前置きをしてから、ぽつぽつと話し出す。


「別に特に整った顔してる訳じゃねぇし、スタイルが抜群に良い訳でもねぇ。あ、別にこれ悪口じゃねぇからな!?けど、しっかりしてるようで実は結構おっちょこちょいで危なっかしいとことか、たまに変な行動力発揮するとことか、妙に巻き込まれ体質で不憫なとことかみてるとほっとけねー、俺が護ってやんなきゃ、って衝動にかられることはある、かな」


あ、あと、不意に魅せる笑顔とかすっげーかわいい、なんてイケメンな笑顔で付け足すから。


『っ・・・』

「ん?って美香、顔真っ赤だぞ!!?熱でもあるんじゃねーか!?」

『大丈夫だほっとけ天然タラシ』

「意味がわかんねーんだけど!?」


真顔でそんなこと言うから僕に向けて言われたわけじゃないのに僕が照れたじゃないか!無自覚イケメン怖いなおい!!


『かがみんは葉樹が大好きなんだね』

「?おう、美香も大好きだぞ!」


にかり、なんてとてつもなくいい笑顔でそんなことを言う。


『もう、いい…僕の負けでいい……』

「俺と美香でなんか勝負してたのか?」


きょとん、として首を傾げるかがみんは190cmオーバーなのにかわいい。なにこいつスペック高すぎ。


『かがみん、僕の大切な葉樹を泣かせたら容赦しないからね!』

「おう、美香も葉樹も大切だから俺が護ってやっから!」

『ああもう、牽制するつもりだったのに…!』

「?けんせー??」















知れば知るほどいい所ばかりで
かがみんになら葉樹を任せてもいい、なんて思ってしまった自分が悔しい














「ってもうこんな時間か。美香、俺んちでメシ食ってくか?」

『え、いいの?』

「もちろん。1人で食うメシより2人のほうがうまいし作り甲斐があるからな!」

『…もうかがみん、ご飯定期的に一緒に食べよ僕と葉樹も2人飯だから』