#07


優一side

「ちょっとこい」
「え!!あ、ああ…」
京介はいきなり来た天馬くんをつれて外に出て行った。
そんな京介と天馬くんを見て名前は心配している。顔を見れば分かった。
だってあからさまに焦っている。
しばらくして名前はわざとらしく言った。
『ちょ、ちょっと喉が渇いたからジュース買って来るね…』
下を向きながら早歩きで病室を出た。京介を追いかけるつもりなのだろう。京介も京介で様子が変だった。
その時俺は、二人が何か隠しているのだろうか?と直感で悟った。


名前side

私は優一に適当なことを言って病室を出た。京介が心配だからだ。
そういえばあの子の頭のくるくる、なんだかおいしそ…とか思っていたら優一の病室のすぐ隣にあるテラスについた。



「世の中にはどうにもならない事があるんだ!!」
『!!』
私はテラスから聞こえた京介の声で体を止めた。
こんなに怖い京介の声は今まで聞いたことが無かった。なんでだろう、足が震えている。情けない。
テラスのドアが開く音と、廊下に鳴り響く足音。
京介がこらちにくる、と感じた。
私はなぜかとっさに壁に隠れる。隠れる理由なんて早々無いのに。
京介は私の隣を通り過ぎ、3歩ほど歩くとこちらに振り向いた。
「名前…」
『っ…京介』
京介が目の前に来る。
「…聞いてたのか?」
『…ちょっとだけ』
京介はさらに距離を縮める。
「おい…何下向いてんだよ」
『別に……』
私は目を伏せながら一歩下がる。それにあわせて京は一歩踏み出す。
頭にひんやりとした感覚が伝わると、顔の両脇に京介のチクチクしたリストバンドが目に映る。
「おい!!こっち見ろ!!」
『………っ』
私はなんと言っていいのか分からなくなり、感情的に涙を零した。
「!?泣いてるじゃねえか…俺のせいなのか…?」
『ごめ…』
「謝るな!!……っ、なんで泣いてるんだ…ちゃんと言ってくれ…!!」
京介は私の肩を揺らし、顔を覗き込んできた。
『ごめんなさい……っ、京介の言葉が…重くて…』
「…すまない………あの時は感情的になってたんだ…まさか名前が聞いてたなんて思ってなかったから…」
ごめんなさい、ごめんなさい、と京介の腕の中で泣き続けた。
京介の暖かい温もりが心に沁みて、こんなことで京介を困らせた自分が情けなくて、また泣いた。

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