『むかしばなし・2』

 そっから2人は学年が上がると共にお遊びで終わらんくらいにバレーにのめり込んでいったから、3人でバレーする事は少なくなった。けど、それでも私は侑に、治と喧嘩する度に自主練には付き合わされよった。

「下手くそ!」
「その下手くそのレベルに合わせれんヤツのが下手くそなんやで!」

 相変わらず罵声を浴びせられ、それに負けへんくらいの罵声を返しながら。そんな風に言い合いながらする侑とのバレーが楽しくて、双子喧嘩は正直、ちょっとだけワクワクしよった。

 私からしたら、宮兄弟はそこら辺に居る学生とあんまし変わらへんって思いよったけど、この頃から「宮兄弟と幼馴染てほんま!? なぁ、侑くんて好きな人居るんかなぁ?」そんな言葉を周りの女子からよお投げかけられた。

 知らんし。そんな所まで把握する訳ないやろ。いくら幼馴染でも。

 そんな事を心の中で思っていたが、言うとキリがないくらいに尋ねられるので「さぁ?」の一言で済ました。まぁ確かに、宮兄弟はイケメンっちゃあイケメンかもな。昔はよお喧嘩してぴーぴー泣き顔晒しよったクセに。



 中学生になって、侑がセッターを任せられると双子の名前は瞬く間に広がっていった。

“野狐の宮兄弟”そんな言葉が至る所から聞こえてくるようになった。それは侑と治のコンビが絶品やったから。こん時から稲高から声掛けられとったし。この辺りから侑は更にバレーにのめり込んでいった。

 治が帰るて言うても1人で残って練習する事もあった。ちょっとのめり込み過ぎて心配になるくらいに。そんな侑が心配で私はよおその居残り練習に付き合うた。ほんまにやり過ぎやと思うた時は私がストップをかけて、無理くり引っ張って帰るような時もあった。

「なまえも稲荷崎行くやろ?」
「は? あそこ一般で行くん大変なん、侑知らんのか?」
「知らん。俺はスポーツ推薦やから」
「……はぁ。あそこ倍率高いんやで? そんな簡単に言うなや」
「へぇ。じゃあ頑張れ」
「……むっかつくわぁ」

 治が帰った後、侑に付き合うた自主練の帰り道にそんな事を言われる。その言葉のせいで、私は全然やる気の無かった受験勉強に精を出すハメになったんや。


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