『むかしばなし』
私と宮兄弟の出会いはまだ小学校に上がる前。テレビにも飽きて、家の近くにあった公園で1人で砂遊びをしよった時。
「なあ。名前、なんて言うん?」
今思い返すとナンパか? て、突っ込みたくなるような言葉を掛けてきた太眉の男の子が侑やった。
「みょうじ……なまえ。アンタは?」
「俺は宮侑! なあなまえ! お前1人なんやろ? せやったら、ちょうどええ。俺も1人やから、バレーのあいて、して!」
丁度ええって、それは侑にとってはな。そんな突っ込みを入れたなる所やけど、その強引さ故に、言われるがままバレーを相手をする事になって。
私にとっては初めて触れるバレーボールやったから、そら下手くそやった。でもそれは初めてやから仕方無いやんか。そやのに、侑ときたら。
「はぁ!? ちょ、どんな うけかた したらそないな ほうこう にボールが行くんや!お前、うんどうしんけい無いんか?」
とか、まぁ初対面の相手に対して無遠慮な言葉をポンポンと投げかけてきた。
初めは下手な自分が悪いんや思うて耐えとったけど、段々、ただ付き合おうとるだけやのに、何でそない言われないかんのや! って理不尽さに腹が立って来た私は、「あぁ、また! こんのポンコツ!」侑のその言葉を皮切りにプツリときた。
「あんなぁ! 人がはしっこで砂と遊んでたん、ひっぱりだしたかと思ったら。なんやの!? その言いかた! 私は しょしんしゃ や! しょしんしゃ に侑のレベルもとめてくんな! 侑があわせぇ! 人でなし!」
そんな思いつく限りの言葉をぶつけ、ボールを思いっきり打ち返してやった。ぜえぜえ息を切らしながら侑を見つめた私に侑はボールを受けるのも忘れて、ポカンとしとった。
「おぉ……、なんや自分。めっちゃええスパイク打たはるやんけ……」
侑は私の言葉に反応するでもなく、感心したようにそんな言葉を呟く。
「えっ。ほ、ほんま……?」
散々貶してきた相手からそんな褒め言葉貰えると思うてへんやった私は、ソワリとしてしもうて。
「おん。今のめっちゃ良かったで! ちょお、今のかんかく 忘れんうちにもっぺん!行くで!」
「よっしゃ!」
気が付いたら私も夢中でボールを追ってしもうてた。そんな風に2人して砂まみれになりながら1日中バレーをしたんが侑との初めましてやった。……初めましての時から喧嘩て。私らどないなっとんねんやろ。
この日はどうも治と喧嘩しとったらしく、次の日には仲直りした治を連れて来たんやったな。そん時は全然侑と治との見分けが付かんくて、目を白黒させたん覚えとう。
「どっちがどっちや!?」て聞いたら、侑が 「昨日さんざん 遊んだやんけ」ってちょっとむすくれて。それを見た治が 「昨日1日じゃそら分からんやろ。お母ちゃんやってたまに俺らのこと まちがえんねやから」とやけに冷静に突っ込んで。その言葉にまたムスッとした侑を治と一緒に笑って。
そっからは治も入れた3人でよおバレーして遊んだ。
それが私と宮兄弟の出会い。