自動改札から阻まれる私の人生


 私の通う高校は、宮城県でも随一の進学校と呼び名が高い私立白鳥沢学園だ。 通称“白鳥沢”と呼ばれていて、中高一貫の高校でもある。校内はとても広く“ホテルみたいだ”と評されることも多い。
 そんな進学校に私が一般入学出来たことは奇跡に近い。入学自体が奇跡に近いからこそ、学校の授業について行くのはそんなに簡単なことではない。
 だから私は、毎日早めに登校して図書館で勉強をすることにしている。……まぁ、白鳥沢はそういう生徒で溢れかえっているのだけれど。だからと言ってなんにもしないままだと、私のような凡人はすぐに切り離され取り返しのつかないレベルにまで差をつけられてしまう。せっかく白鳥沢の生徒としてこの制服を身に付けているのだから、頑張れることは頑張りたい。

―間もなく2番線に6:12発……

 そんなことをぐるぐる考えていると、自分が乗る電車のアナウンスが聞こえてきてハッとする。早く乗らないと乗り遅れてしまう……! そう焦った私は、なんの意識もせず自動改札を通り抜けようとしてしまった。

―ピピッ

 そして、焦る私に行かせないとでも言いたげな電子音が手元から響きそこでようやく我に返る。……やってしまった。慌てるとすぐ意識が抜け落ちることに、何度反省して何度自己嫌悪に陥ったことか。利き手を使う時はいつだって意識するよう言い聞かせているはずなのに。あぁ、嫌になる。――私の利き手は、左手である。
 だから改札を通る時はちゃんと意識して右手を使っていたのに。「……すみません!」と私の後ろに並んでいた人達に謝りながら係員のもとへ向かう。こんなことも出来ないなんて……。自分はなんて情けないんだろう。通勤通学で先を急ぐ人達にも申し訳ない。……あぁもう。自分が自分で恥ずかしい。

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