future

「前にこうしてドレス選びに付き合ってもらったことありましたよね」
「懐かしいな」
「まさか本当にディナーに連れて行ってもらえるとは思ってもみなかったです」
「なまえとの約束を1度でも破ったことがあったか?」
「ないですね。さすが蒼也さん」

 蒼也さんは今も昔も、ずっと変わらない温度で私のことを大事にしてくれた。そして、たくさんの宝物を与えてくれた。蒼也さんの隣で一緒に歩んできた日々は、色々あったけどどれも暖かな光を纏ったように綺麗だ。
 その中でもひと際輝く日がもうすぐやって来る。そこに向けて一緒に歩みを進められることもまた、大事な宝物になる。

「唐沢さんがディナー代も何もかも出すって引かなかったのも懐かしいですね」
「そうだったな」
「唐沢さんなりに責任感じてたみたいで、迅くんにも未来予知してもらってたらしいですよ」
「結局、俺たちは踊らされたようなものだったな」
「まぁ、今となっては笑い話ですけどね」

 当時はどん底に落ちたような気分も味わった。当時の私が知ったら怒るだろうなと思いつつも、つい緩む頬を抑えることは出来ない。蒼也さんの頬も同じように緩んでいるから、きっと蒼也さんも同じ気持ちなのだろう。

「相手の方にも心に決めた人が居たんでしたっけ?」
「その後、無事一緒になることが出来たそうだ」
「唐沢さんも人が悪いですよね。全部知った上での話だったなんて」
「相手の事情も考慮してのことだとは思うが。……まぁ、俺ももう少し知ってはおきたかった」

 ふ、と溜息を吐く蒼也さんに労いを込めて「まぁでも、あの時全部知ってたら、今こうして昔話に花を咲かすことも出来なかったかもですもんね」と投げかければ、「そうだな」と気を取り直してくれたようだ。

「……それで、どうですか? 蒼也さん。私の花嫁姿は」
「今までで1番綺麗だ」
「ふふっ。それなら良かったです」

 色んな出来事を一緒に経験していって、それらを過去にして。今が1番幸せだと、胸を張って笑い合っていきましょうね、愛しい愛しい旦那さま。
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