菅原孝支



「みょうじって大地のこと好きだべ?」
「なっ……」

 食堂に行った澤村を見送った後、机に寝そべった状態で菅原が渾身のストレートを投げ込んできた。あまりにもド直球過ぎて、言葉を取りこぼした私を「あったりぃ」としたり顔で笑う菅原。

「な、ど、ど……」
「いやぁ。前にさ、バイト終わりのみょうじとはち会った時あったじゃん?」
「あぁ、なんか謎のメンバーでラーメン食べたやつ」
「そうそう。大地と旭と俺とみょうじ。意外と珍しい組み合わせだったよな」

 バイトから帰っていた時に東峰から声をかけられ、振り向くと東峰ともう2人居て驚いた。理由を訊くと「今からラーメン食いに行くんだ。みょうじもどうだ?」と澤村に誘われ、思わず頷いたあの日。
 菅原が確信する何か、私したっけ――? ぐるぐるとあの日のことを思い出してみても、特段思い当たる節はない。あの日は3人のバレートークにひたすら笑ってただけだったし。

「別にそれは関係ないんだけど」
「いや関係ないんかい!」
「ふはっ。でも、普段のみょうじ見てたら気付くって」
「うっ、」

 言葉に詰まった私に「みょうじが大地をなぁ。いや、まぁ納得っちゃ納得か」と1人楽しそうに会話を進めていく菅原。なんか、すごく楽しそうだけど。一応菅原にも関わることだ。

「でも、いいのかなって不安もある」
「え、なんで?」
「お互い進学だし、今の関係壊れるかもだし……」
「そっかぁ。ま、俺は面白いけどな!」
「は?」

 あっけらかんとした様子で言い放つ菅原に思わず力のない声が漏れ出た。お、おもしろいってそんな……。私は結構悩んでるっていうのに。

「恋愛感情を他人に訊いてもどうにもなんねぇだろ?」
「う……まぁ」
「みょうじがバレー部のこと考えて……とかなら、大地のこと諦めるのも手だと思う。周りなんて関係ねぇ! 好きだ! って突っ走るならそれはそれでアリ。どっちに転んだって相手は大地だし、片方はみょうじだべ? 大丈夫なようにしかなんねぇだろ」
「……菅原、」

 また言われた。菅原の“大丈夫”は、澤村のことを信じての言葉。……そして、私のことも信じてくれている。それはやっぱり、凄く嬉しいこと。
 澤村のことを好きだと思う自分も、悩んで迷う自分も全て、間違ってないって言って貰えてる気分。

「ありがとう」
「おう。まぁせいぜい頑張れ」
「いや言い方」
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