清水潔子



「どうしたの?」
「……ごめん。相談、いい?」

 お昼休み。潔子と隣り合って座って開口1番。潔子の方から様子を窺われた。それだけ私の顔がげんなりしているのだろう。……隠せもしないなんて。結構な大ごとだ。

「澤村……なんだけど」
「澤村? なまえに何かした?」
「わっ違う! 全然違うのっ」

 澤村の名前を出すと、途端に頭の中の澤村を睨みつけるように眉根を寄せた潔子を慌てて制し、「……その……す、きになっちゃって……」と口籠りながら白状する。本人相手じゃなくても、好意を打ち明けるのってものすごく恥ずかしい。

「え、好き?」
「ご、ごめん! 大事な時に……」

 私自身も進学で大事な時期。だけどバレー部は春高に向けて力を注いでる時期で。そのバレー部でみんなをサポートしている潔子にこんな個人的な相談をしてしまって申し訳ない。でも、誰かに聞いて欲しくて。そういう思いで告げた気持ちを潔子は少し間を置いた後、「そっか」という言葉と共に受け止めた。

「やっぱりメイワク、だよね?」
「迷惑かどうかは分からない」
「……う、うん」
「それに私が“迷惑”って言った所で、止められないでしょ?」
「う、」

 ズバっと言われると否定は出来ない。確かに、初めて気持ちを自覚した時も自制しようとした。そして出来ないままここまで来た。他人にどう言われても変わりはしないのだろう。じゃあ私は一体どうしたんだ?

「私は良いと思うけど」
「潔子、」
「澤村は良いヤツだし」
「で、でも……」
「なまえが悩んでるのは、バレー部のことでしょ」
「!」

 ドキリとした。モヤモヤしてた悩みをぎゅっと捉えられた気分だ。そうか。私は、バレー部に迷惑がかからないか不安なんだ。澤村というバレー部の土台を、私が崩してしまわないか、心配なんだ。

「澤村なら大丈夫。それに、他のみんなだってちゃんと強い。だから大丈夫――って。今度は私に言わせて」
「潔子……!」

 根拠がなくても。誰かに――友達に、こう言って貰えるのって凄く安心出来るんだ。その言葉をくれた潔子を見つめれば、潔子も優しく見つめ返してくれるから。本当に、大丈夫なんだって思える。

「ありがとう、潔子」
「ふふっ。今までのお返し」

 潔子の笑顔はいつだって美しいし、大好きな表情。私、潔子のことも大好きだよ。
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