Kira Kira

 嵐山くんに連れられたラウンジ。そこはたくさんの隊員で溢れかえっていて、その中で嵐山くんと2人して向かい合うのはちょっと気まずい。ましてや私1人学校の制服という出で立ち。好奇心を浮かばせた視線がそこかしこからして、身が縮まる。

「もうこんな時間か。今日はここまでで切り上げよう」
「ふぅ……」
「すまないみょうじさん。疲れただろう?」
「ううん、大丈夫。この時間だとタイムセールもちょうど良いし」
「たいむせーる?」

 小首を傾げる嵐山くんに先ほど烏丸くんと話したスーパーのことを伝えると、「そうか。……そうだったのか」となぜかこの話を嬉しそうな顔で聞いていた。スーパーにタイムセールがあるってこと、もしかして知らなかったの?

 タイムセールの話を新鮮な態度で聞かれた私は半信半疑な感想を抱く。すぐにそれはそんな訳ないかと打ち消し、帰り支度を始めることにした。トイレットペーパー、1人1つだから大丈夫だろうけど早く行かないとどうなるか分からないし。

「じゃあ私はこれで」
「えっ」
「えっ」
「……送らせて、欲しいんだが、」
「えっと……、」
「……出過ぎたことを言っているだろうか」

 学校では少し強引が過ぎるくらいの親切をしてくる嵐山くんが、今は窺うように告げてくる。やっぱり嵐山くんも“クラス委員だから”という気持ちが作用していたのだろう。彼はやっぱり真面目な人だ。

 そんな彼に、学校の外でまで気にかけなくても平気だと言おうと思ったけれど、私の頭にまたしても広告の“お一人様につき1つまで”というワードがチラつく。

「じゃあ、買い物に付き合って貰えないかな」
「! 良いのか!?」
「……逆に嵐山くんが良ければ、なんだけど」
「ああ! もちろんだ!」

 私の方がしたお願いに、こんなに嬉しそうな顔をされるとは思わなくて。誰かの役に立てるってことに、こんなにも喜べる人が居るんだなぁと思わず関心してしまう。

「なんか……嵐山くんってホンモノだよね」
「? どういう意味だ?」
「勘違いはしてなかったけど、嫌でも理解させられる」
「? すまない、意味がさっぱり」
「なんでもない」

 歩みを進めた私の後ろで、嵐山くんが「みょうじさん」と私を呼び止める。前はそれだけで心がもやもやしてたっけ、と思いながら今はそれに「ん?」と素直に振り返る。

「次、ボーダーに来る時はすまないが俺が伝える応接室に来て貰えないだろうか」
「良いけど。どうして?」
「いや、その……みょうじさんも色々な人から声をかけられると疲れるだろう」
「声? 別に烏丸くん以外からはかけられてないよ?」
「そ、れは、そうなん、だが……、」
「? まぁでも2人きりのが落ち着くのは確かだし。分かった」

 ありがとう、と安堵しながら告げる嵐山くんの声を聞きながら踏み出した外では、星が夜空にきらきらと浮かんでいる。

「今日の空は綺麗だな」
「……そうだね」

 嵐山くんの隣で見上げる空は、澄み渡って見える。こんな風に空を綺麗だと思ったのは何年ぶりのことだろう。




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