とびっきりキュート

 辻新之助くん。2年C組に居る後輩くん。好きな物は恐竜、シュークリーム、バターどら焼き。血液型はB型。誕生日は確か――

「あれ、辻くん! どうしたの、3年のクラスになにか用??」
「どっあっ、……あ、あの……っ、」

 辻くんに思いを馳せているとまさかの本人登場。嬉しくて声をかけると途端に顔を赤く染めてオドオドしだす辻くん。可愛い。堪らない。

「こらこらー。辻ちゃんは俺に用があるんだから。邪魔しないのー」
「あぁもう〜ちょっとくらい良いじゃん〜!」

 私としてみればもう少し辻くんと話し(イジり)たかったけど、長くなるのを知っている犬飼から抑止の声が投げかけられてしまい、それは未達成のまま終わってしまう。

「あっち行こうか。みょうじ居たらまともに話せないしね」
「すみません……」
「えーっ折角会えたのにぃ。……また来てね? 辻くん」
「ハヒッ」

 犬飼の向こう側に隠れるようにして立っていた辻くん目掛けて声をかけると、肩を震わせ小さな声で返事をしてくれる。ハヒッって。ほぼ声出てないじゃん。

 辻くんが女子に免疫がないことは女子の中では結構有名だ。初めは下の学年の子たちが辻くんで遊んでるのを見て“イジり甲斐ありそうだなぁ”と眺めていた。そして、犬飼と同じクラスになって、私にも辻くんとの繋がりが出来た。

 そして今みたいに犬飼を尋ねて3年のクラスに来た辻くんに初めて声をかけた時も、今みたいな反応を示された。私の感想は案の定“可愛い”だ。

 辻くんは可愛い。高身長で色白で切れ長な瞳からは“クール”という印象を抱く。けれど、実際話してみるとそのイメージは“キュート”へと変わる。いわゆるギャップ萌えだ。

 そんな辻くんは女子に結構人気がある。年上女子からは“可愛い”という理由が大半を占めるけれども。私もそれが理由だ。

 だけど、私は辻くんと付き合いたいと思っている。あの感じだと彼女は居なさそうだし、居ないという情報は前に犬飼から聞き出している。

 私が辻くんにとって初めての彼女になりたい。辻くんと一緒に色んな初めてをやってあげたい。

 辻くんをリードしたい。そんなことを思い、日々辻くんに想いを馳せる毎日だ。

「……まーた辻ちゃんのことイジって。ほんと飽きないよね」
「だって可愛いんだもん」
「好きな子程意地悪したくなるの?」
「そうそれ」
「小学生男子じゃん」

 戻って来た犬飼が私に溜息を吐いている。……ほんと、辻くんに対する私の態度は小学校低学年の男子が好きな女子に対して行うソレとほぼ一緒だ。でもやめられないんだもん。

 だって辻くんが可愛すぎるから。
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