嫉妬

 私達は一卵性ではないので、顔つきは決してソックリとは言えない。だけど、あくまでも同じ血を分け合った姉妹。何かしらの共通点はあるはずだ。ただ、性格だけはどう頑張っても似てるとは言い難い。

 琴音のようなおっとりとした雰囲気はまるでカケラも感じられないし、一緒に伸ばしていた髪の毛も、琴音はあんなに似合ってるのに、私には似合わなかった。

 ショートヘアになった私を見て驚いて涙を浮かべた琴音に、「私は私だよ」と笑うと、琴音は「鈴音は強いねぇ」と目尻を下げながら褒めてくれた。

 琴音は私のことを“芯があって羨ましい”と憧れの人物を見るような顔つきで言ってくれる。

 琴音のそういう、人のことを妬んだりする訳でもなく、単純に純粋に“羨ましい”と言える部分に憧れる。……いや。私と琴音は双子といえど異なる。本心を告げるのならば、“嫉妬”している気持ちも大いにある。

 私にも琴音のような優しさがあれば。琴音のようにおっとりとした雰囲気が醸し出せれば。……もっと、可愛い女の子になれたのかもしれない。
 だけど、そうなれないから“私は私”と割り切って生きるしかないのだ。その部分を褒められると、ちょっとだけズルをしているみたいでむず痒い気分になっていることを琴音は知らない。

 もしも私と琴音が入れ替わったとしたら。琴音は鈴音という入れ物の中に入っても琴音らしく振舞えてしまうのだろう。そして、琴音という入れ物に入った私を見て悲しそうに泣くのだ。「こんなの、鈴音じゃないよね」と、涙を浮かべて謝るのだろう。そんな風に悲しい表情をされて、耐えられないのはきっと私の方。

 いくら琴音に嫉妬していたとしても、大好きな姉であることに違いはないのだ。だから、琴音を悲しませない為にも。“私は私”と胸張って生きていく。それが私の為であり、琴音の為でもある。

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