(other)

 12月7日。あれから季節は冬になった。肌寒いっていうレベルの寒さじゃなくて、朝ベットから起きるのが辛いと感じる程の寒さになった。寒いのは苦手だけど、今日という日は特別。

「賢太郎、今日誕生日でしょ?」

 そう尋ねると僅かに目を見開く賢太郎。最近は表情の変化で何を思っているか分かる様になりだした。この顔は驚いてる顔。なんで知ってる? って思ってる。

「矢巾君から聞いた」

 眉根を寄せる。あ、怒ってる。

「私の方から聞いたの! だから、矢巾君の事責めないでね?」
「……アイツに誕生日教えてねぇ」
「それは矢巾君の情報網の凄さかな?」
「アイツ何者だよ」

 あはは、確かに。賢太郎って誰かに「俺の誕生日12月7日!」とか言いふらしたりしないタイプなのに。なんで矢巾君が知ってたんだろ。まぁ、でもおかげで賢太郎の誕生日知れたから、いいんだけど。

「今日の夜会える?」
「おう」
「じゃあ、いつもの公園で待ってる」



 思い出の公園で賢太郎を待つ。……ここで賢太郎と初めてちゃんと喋ったんだよなぁ。しみじみと思い出に浸っていると「待たせた」と少し息を切らして来る賢太郎。前は約束して会う仲じゃ無かったのになぁ、とまた昔を思い出してちょっと笑っちゃう。

「何笑ってんだよ?」
「んーん、別に」
「体冷えてねぇか?」
「そんな待ってないから。大丈夫だよ、賢太郎」
「ん、」

 付き合いだして分かった事だけど、賢太郎は意外と心配性だ。今だって待たせたんじゃないか、体を冷やしたんじゃないかと心配してココアを渡してくれる。そんな優しい所も好きだなぁとしみじみ思う。

「これ。誕生日おめでとう」

 紙袋を差し出す。受け取った後も、じっと袋を見つめたまま微動だにしないから「開けてみて」と急かす。

「マフラー……」

 手作りはちょっと時間が無かったから……と言い訳がましく言うけど、耳に入ってないみたい。

「賢太郎?」
「……嬉しい」

 あ、私の好きな顔してる。

「あとね……実は色違いだったり……」

 京谷に渡した黒色とは別に自分用に買った白色のマフラーを出す。

「嫌……かな?」

 おずおずと尋ねると、白色のマフラーを取ってぐいっと私の首に巻き付ける。

「……嫌な訳ねぇだろ」
「……良かった。……暖かい」

 そう言って見上げるとすぐ近くにある賢太郎の顔。顔を赤らめてそのまま離れていこうとするから、頬に手を添えて私の方から唇を寄せる。

 固まったままの京谷に「誕生日だから……」そう笑いかけると「もっかい」とまさかのアンコール。

「や、さすがに恥ずかしい……」

 手を離そうとすると後頭部を掴まれて、今度は賢太郎の方からキスされる。

「……好きだ」
「私も」

 甘い言葉を交わした後、「柄じゃ無いね」と笑い合う。

「今日はもう暗いし、送ってく」

 手を差し出されるから、その手を握って歩き出す。

「……本当にありがとな」

 マフラーに顔を埋めて、嬉しそうに言う賢太郎を見て、クリスマスプレゼントは手作りの物渡したら、もっと喜んでくれるかな?なんて思ってみたり……。








「賢太郎。メリークリスマス」

 12月24日。誕生日の時は手作りの物渡せなかったから、今回は早めに準備していた手作りの手袋をプレゼント。

 賢太郎は余り顔に出すタイプじゃないけど「……あざす」そう言う声色はとても嬉しそう。喜んで貰えたし、作った甲斐があったなと心でガッツポーズをする。



「コレ」

 賢太郎からずいっと出されたのは可愛くラッピングされた小箱と紙袋の2つ。賢太郎もクリスマスプレゼントを用意してくれていた事に感激しつつ、プレゼントを開けてみる。

「わぁ……! 可愛い……!」

 小箱にはとても可愛いネックレス。紙袋には首輪。

「タロウにまで貰っちゃって良いの?」
「アイツには世話になったから」

 その言い方がおかしくてつい笑ってしまう。

「帰ったらすぐタロウに着けるね! 本当にありがとう!私も早くネックレス着けたいなぁ。ねぇ、今度どっか行こう!」

 好きな人からの貰い物って、最高に嬉しい。テンションあがる。あぁ、早く出かけたい。
 これからはネックレスを着けて、もっともっと賢太郎と色んな所に出かけたいな。

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