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恋情と喪失

※有吉と古我


「有吉くん、どう思っているの」
「どう、って。何を?」

何について言われているのか分からずに、そう答えれば古我に睨まれた。睨まれたところで、答えられるはずがないのに。第一、何についてなのかが、分からない。

「布留川のこと」
「事故ったって、聞いたけど」

もうそろそろ、退院できるんだろ?聞けば、そうだけど。と、言いにくそうに続けられる。

「布留川、貴方のことだけ、忘れているみたい」

だから、なんなのだろう。おれのことをたとえば本当に、布留川が忘れていたところで、古我には関係ないはずだ。と、ぼんやり思う。と、言うより、古我にとってはむしろ、いいことなんじゃないかとも思う。

「それなら、いいじゃん?」
「何が、いいのよ」

だって古我さん、布留川のコト、好きなんだろ?と、言えば、頬が熱を持った。パァン、という音が鳴り響く。一瞬後に、頬をぶたれたのだと理解した。
此処は教室の外の廊下で、人通りが少ないとはいえ、多少人が通っている。不思議そうに見られている事に気付いているのか、古我は、ハッとしたように俯く。耳が赤い。

「それとこれとは、別なのよ」

絞り出すような声で言われて、分からない。とだけ、思った。どれくらいそうしていたのか、いつの間にか事業開始のチャイムがなる。教室、戻ろうか。と、言ったところで、古我は反応しなかった。

「―――――、有吉は良いの?忘れられたままで」
「むしろその方が、都合が良い」

もう一度ビンタが飛んできたら大変だ。と、思いながら素早くその場を後にする。古我は、追いかけてこなかった。ああでもきっと、薄情だ。とは、思われている。そんな感じがする。
教室に戻ればほっぺた、どうしたんだよ。と、萩野女に聞かれた。

「ああ。コレ?殴られた」
「誰に?」
「ヒミツ」

なんだよそれ。と、笑われる。
嗚呼、無性に恭平に会いたい。休み時間になったら、ダッシュで行こう。きっと恭平は、屋上にいる。

2012.10.29


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