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マッド・パーティー

※脇役がトリップ後、総受け気味


さながらそう、この状況はつまり、まるでアイツの置かれていた境遇そのもの。誘う者も導く者も示す者も治める者も、狂う者も眠る者も、仕える者も。寄って集って“アリス”を自分のものにしようとする。せめてオレが女だったら良かったが、生憎オレは性別は男だ。男が“アリス”でなくても、良いんじゃないかと思うわけだが。正面切って相手するのも面倒だし、オレはあの転入生のように会う者すべてを虜にしたわけじゃない。強いて言うなら、最初からこの国の住人達は“アリス”に夢中。“アリス”という、固有名詞という者に、夢中。だから関係ないのだ。オレの性格や容姿や、なにもかもが、無意味。だとしたら、此処から元の世界に戻る方法が分からない以上、考えがまとまるまでは大人しくこの場所におさまっていても、誰も文句は言わないだろう?と、いうか言わせない。此処は、この場所はイカレ帽子屋の管轄。イカレタお茶会に招待された者しか足を踏み入れることが出来ない。だからこの世界の中で一番安全、安心できる場所でもある。
一度白ウサギに襲われかけ、チェシャ猫にも襲われかけたが、お茶会メンバーは比較的常識人が集まっているらしく、そんなこともない。周りで地団駄踏んでいる音も聞こえてくる気がするが、そんなことは知らん。そんなこんなで。逃げるでもなく戦うでもなく立ち向かうでもなく、俺は現在、イカレタお茶会に参加中。通算108杯目のブレンドティーを口にする。

三月兎が言う。
「アリス、いつまで此処にいるの?」

眠りネズミが言う。
「アリ、ス……そろ、そろ……行く………すぅ」

イカレ帽子屋が言う。
「君はどうやら、今までのアリスとは違うようだ」

少し考えてから、俺は応えた。

「そりゃ、今までの“アリス”は女だったからじゃないのか?おまけにおめーらみんな美形だから女ならみんな、惚れてるだろーよ。けど生憎、オレは元の世界で美形は見慣れてるんだ。染まってたら別だろうけど、な。後な、おめーらの顔、似てんだよ。オレに嫌がらせしてくる奴らに。そんな奴らに何をどーしたら惚れるっつーんだ。食われるのだけはマジ勘弁。」

嗚呼、ほんとオレ、ノーマルで良かった。そんなことすら考えながら言葉を続ける。

「まーなんか、此処、想像で相手倒せるみてーだから。ウサギと猫には可哀想なことしたけど仕方ねーよな。今までの鬱憤晴らせた上に、こんなうめーお茶飲めるなら今までの苦労を水に流してもいいくらいだ。否、ながさねーけどよ」
「面白くない。大変面白くない」
「は?」
「こんなアリスは要らない!」
「そりゃどーも?」

お、なんだか元の世界に戻してくれる感じじゃねーか、この流れ。と、思っていればあれよあれよという間にどっかの扉の前に連れて行かれ、放り投げられた。感じたのは、この世界に来る前に感じた浮遊感。次いで、吐き気。

「有栖!!」
「あ。戻ってこれた」
「何言ってんだよ!それより大丈夫か!?親衛隊の奴らn「あー…なんだ?は?マジで?ウソだろ。信じねーぞ、そんなん……」どうしたんだ??」

どうもアイツラ、誰かに似ていると思ったらものすごく、生徒会のメンバーとか、風紀委員のメンバーとか、コイツに取り巻いてる奴等の顔だった、という事実に行きつき、しかも今までと違う視線を受けて、困惑した。

「「こんなのって、はじめてー!!!」」

なに、もしかしてあっちとこっち、繋がってるとか?んな馬鹿な。

「え」

なんでオレ、抱きつかれてんの。意味不明。しかもなんか周りの奴等まで笑ってるし。なに、これ。もしかしてこの学園中もしかして………

「そのもしかして、だ」
「は!?いもm……風紀委員長!?」

いやいやいや、そんな馬鹿な。勘弁してくれよ。マジで。ていうかなんであなたオレの思ってること読んでんのわけわかんね。なんか転入生は今まで自分に心酔してた奴がオレに興味持ちだしたからか一人でぷりぷり怒ってるし。何この状況。解せぬ。

「赤のクイーンを探せ」
「は?」
「そうしたらなんでもひとつ言う事、聞いてやるよ、平凡」
「いやいやいや、」

何を仰ってるんでしょうね。生徒会長は。

「赤のクイーンって、貴方でしょう、会長。何言ってるんすか。探すも何も、「へえ?」えっちょ、ちかっちかいっ!!」

いやもうちょっとほんとマジでわけわかんないんだけど。なにこれ、まだ夢の続きとか?勘弁してくれ。なんでオレ、会長に顔掴まれて上向かされてんの。理解できねー。

「有栖、おれ、の…………だめ…………」

おい、書記。誰が抱きついて良いって言った。お前ら今までオレにしてきた仕打ち、忘れたとは言わせねーぞ。まあでも正直助かった。

「面白い。実に面白いね……」

副会長…あなたもですか。イカレ帽子屋でしたか。マジですか。もう理解の範疇、超えました。無理です。けど多分意識飛ばしたら大変なことになるんだろーなー。ていうかこの学園中全部あの世界とあれなら、それなら、もしかして。

「その、もしかしてだが?」
「だぁらあああっ!!ちょ、マジ、風紀委員長、勘弁してください。そして書記、離れてください。とりあえず俺は落ち着きたいです。なので副会長の淹れてくださるおいしいブレンドティーがほし……いえ、すみません、ごめんなさい。なんでもないです。とにかく離れて、離れて。そんで、なあ、有住」
「!!!!!!なに!!」
「お前が“アリス”じゃなかったの」

誰かに相手にしてもらえて嬉しかったのか、すぐに反応した転入生は、有住だけど?と、困惑気味に答えた。

「「僕らもそう思ってたんだけど!!」」
「違ったみたい、だな」
「………みつ、けた……」
「まあ、私は気付いてましたけどね」
「またまたぁ〜そういう冗談好きだね〜〜〜」
「本当の事ですけどね」

会計。そんなあなたは三月ウサギでしたか。もうだめ、ほんと、だめ。もう、無理。

「おい、有住」
「!!!何っ!!!」
「お前、“アリス”になれ。ていうか、お前が“アリス”だ」
「「ダメだよ〜〜」」
「うっせ。オレはオレだ。幾ら名前が来須有栖だって“アリス”じゃねーんだよ。ていうかなんだよ、なに、この学園中の生徒、マジで不思議の国の住人なの?どんなファンタジー?ていうかなにそれ。どんな中二病??」

ああ、すべてを知らなかったあの頃に戻りたい。どうしたって、きっと、平穏な生活がオレに戻ってくることはない。今までだってきつかったのに。

「安心しろ。俺様のものだと見せつければ兵隊は納得する」
「マジ勘弁。そんなことより溜めてた仕事しろ。仕事を溜めるな。学園を機能させろ」

話はそれから。と、言えば、生徒会メンバーは渋々ながらも退場していった。残ったのは風紀委員と、いまだに状況を理解できていない転入生、ならびにやはり見覚えのある転入生の取り巻き数名。

「………………で、白のクイーンと白のナイトが、お前らだった、と」
「「!!!!!!!」」

驚いたように目を見開いた爽やかくんと不良くんを見て、もうなんなんだこれ。と、オレは溜息を吐く。

「赤と白の争いはオメーらでどうにかしろ。“アリス”はかんけーねーだろ」
「そうはいかないな」

風紀委員長のその言葉に、どうしたものか。と、溜息を吐かずにはいられなかった。

2011.09.24
つづk・・・かない!


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