01
脳内で、誰かが叫んだ。
「―――――ッ、」
此処最近、同じ夢をみる。
誰かを追いかけ、追いかけていた誰かは、追いつきそうになった瞬間、霧のように散ってしまう。そんな夢を、みる。
「なんで」
今度こそ。そう思った瞬間、何故そう思ったのか分からずに困惑した。
「………おい」
いるんだろ。そう問いかければ、此処にいると答えているかのように、胸の奥が震えた。
「お前、何を知ってるんだ」
問いかけたところで、答えは返ってこない。
胸の内に巣食う『誰か』は、決して俺に答えを返してはくれない。
自分に不都合な情報は全て隠し、俺が知らない間に、俺の体を使う。
「―――まったく」
なんだってんだ。
そんなことを考えながら、ふと、携帯に視線を向ければ見覚えのないストラップがつけられていた。
いつ、つけていたのだろうか。
記憶がない、という事はおそらく、俺が俺でない時につけたのだろう。
「わからないな」
何故、
―――――凌也
記憶の中で、誰かに呼ばれた。
2012.05.09