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動じない人

※転入生とその同室者について


彼の事を一言で表現するならば、ぽっちゃり。見ていて少しほほえましくなるくらいの、ぽっちゃり。顔も可愛らしい。が、今まで彼が注目されることはなかったように思う。
彼が注目されるようになったのは、転入生と同室になってからだ。少しぽっちゃりした彼は、みどりの黒髪を短く切って、縁のない眼鏡をかけている。痩せたら急激に人気の出そうな顔立ちをしているが、残念なことに彼はぽっちゃりであるため、現在二重顎だ。ぼーっとしている彼に、転入生が会いに来た。転入生についてきた人たち(主に生徒会メンバー)はそんな彼を睨み付けている。実に恐ろしい。しかし、彼はそんな視線を受けてもなお、穏やかに笑っている。

「ぼくに話しかけてくれるのは嬉しいけど、後ろの人たちに話しかけてあげたら?その方が喜ぶよ」
「な!おれは安岐と話したいのに!」

あれ、少し前まで名前呼びだったのに、いつのまにか苗字呼びになっている。一体何が起こったのだろうか。

「あのねー、正直なところ休みごとに毎回クラスに来られたら困るんだ」
「うっ」
「第一、寮で部屋一緒なんだから会えるでしょ。ぼくに会いにくるより、もっと別の人たちと交流した方が良いと思うな」
「で、でもっ」

一体何があったのか、少し前まで人が喋ってる途中に自分の考えを言ってきていた転入生が、彼の言葉を遮らずに聴いている。彼の言葉が途切れたと思った時に、言葉を発している。本当に一体何があったのだろうか。

「前に説明してわかったって、頷いたよね?それに、友達の困ることはしたくないって、言ってなかった?」

にこやかに言った彼に、うう…と、転入生は唸った。

「後、勉強頑張るって言ってたよね?生徒会の仕事も手伝うって、言ってたよね?」
「言った!けど、」
「これはきみにしかできない重要任務。とも言ったよね?忘れちゃった?」
「―――――っ忘れてない!!!」

あくまで、にこやかに彼は言う。小さな声で、落ち着いて話す為、周りには彼が何を言っているのか、すべては聞こえていないのかもしれない。現に、生徒会の彼等は不思議そうな表情をしていた。

「がんばってね?友達だから、応援してる」
「!!!うん!!!!!!」

見ていた限り、先週まで彼は頻繁に親衛隊に呼び出され、下駄箱は荒らされ、机も荒らされていた。にもかかわらず、今は何故かそれが落ち着いている。一体連休中に何が起こったのだろうか。そうこう思っているうちに、転入生たちは引き上げて行ったらしい。一体どうして、転入生が素直に彼のいう事を聞くことになったのか、彼に聞いてみないと分からない。けどとりあえず、それから徐々に学園は落ち着きを取り戻していった。実は彼、救世主だったんじゃないだろうか。と、俺が思ってしまったのは仕方のないことだろう。

2011.09.20


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