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そもそもなにも始まらない

※開始前に終了


今まで仕事ばかりで滅多に連絡をしてこなかった父親から連絡が入った。曰く、全寮制の高等学園へ行け。とのこと。今更なんだというのか。と、思いながらも、受かっていた高校の入学手続きが済んでいたにも関わらず、キャンセルされていることを知り、いやいやながらその学園へと足を運んだ。当然、荷物は持っていない。母親からは「あの人も困った人ねぇ。いいのよ、林弥。あなたの好きなようにおやりなさい。何もあの人のいう事を聞かなければいけないという事はないのだから」と、言われている。
だからそう。なんのために俺が此処に来たのかというと、手っ取り早く自分自身の手で編入を取り消す為である。

「……………疲れた」

無駄に大きく豪華な門を見て、溜息一つ。変なとこに金かけてんじゃねーよ。と、思ってしまったのは仕方のない事だろう。ベルを鳴らし、案内の人が出てきたところで学園内に入り、無駄口を叩くようなこともなく、理事長室へと案内してもらう。一応礼を言い別れたが、おそらく金輪際会うようなことはないだろう。

「竜胆林弥です」
「君のような優秀な子が我が学園に入ってくれることはとても喜ばしい事だ」
「そのことなのですが、僕の編入の話はなかったことにしていただけませんか?父に勝手に話を進められ、直接お断りするしか方法がないと思ったのでこちらに伺いました。僕としては、入学が決まっていた高校の手続きを勝手にキャンセルし、全寮制男子高校へ通わされることを勝手に決められていたことに憤りを感じているのです。第一、高校は義務教育ではありません。通うも通わぬも、本人が決めるべきことだと思っています。ですので、」
「―――――――――――そうか」

同情でもひきたいのか、理事長がなにやらぶつぶつ言っていたが、そんなもの俺には関係ない。さしあたって問題なのは、今後の生活についてだ。本当に行きたい高校を選んだのにあのくそバカ親父は折角受かった高校の入学手続きを取り消しやがった。俺のはらわたは静かに、煮えくり返っている。

「そういうわけですので、僕は帰らせていただきますね」
「え」
「え。とは?辞めさせていただけますよね?もし退学金が必要でしたら、勝手に話を進めてくれやがったくそバカ親父……‥いえ、失礼。父に請求してやってください。幾らでも」

そう言って俺は理事長室を後にした。理事長室から学園の門までの行き方は覚えている。帰る途中に何人かに逢い、頬を染められたが、男が男に頬を染める意味が解らん。ああ、もうほんとに迷惑だ。とりあえず心配しているであろう母親に連絡を入れ、恐らく無事に退学できたことを伝え、家に帰ろう。と、俺は携帯電話を取り出しながら、学園を後にした。

2011.09.08
補足*
竜胆林弥(りんどうりんや)
マザコン入ってるかもしれないけど常識人な王道学園に転入させられそうになった可哀相な人。しかしながらそれを拒否拒絶。父親よりも母親を重んじている上に今まで関わってこなかったのに突然勝手な事をされはらわたが煮えくり返り殴りにでもいってやりたい。そんな所存。この後もきっと彼は父親に逆らい続けることでしょう。まる。


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