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3つの恋のお題

2012/07/28
※短編三本
裏通りに連れ込んで/どうしても分かり合えない/俺ばかり好きでくやしい

001:裏通りに連れ込んで//店長と店員
終業時間が終わり、スタッフルームから出た瞬間、手を取られた。相手は分かっている。
「―――店長」
店長。と、いつも通り呼べば、名前で呼べ。と、言われる。数日前から、恋人と言える関係になってしまった。むしろ、周りは俺達が付き合う前から、付き合っているものだと思っていたらしい。同性なのに何を。と、思っていれば、今時恋愛に同性も何もないだろう。と、言われた。時代はいつの間にか移り変わっていたらしい。驚きだ。
「店長、此処、未だ店の前ですけど」
「あ?んなの関係ねーだろ」
ああ、もうこの人には何を言ったところで、無駄なのだ。本人曰く、俺馬鹿だと言う彼は、付き合う前に増して優しくなった。意地が悪い時もあるが、その部分も含めて、好きだと思う。
「分かった」
「…………店長?」
取られていただけの手を引かれ、裏通りに連れ込まれる。物陰に入り込んだ瞬間、唇に、熱が触れた。誰の熱なのかは、そうなる前から、分かっていた。

002:どうしても分かり合えない//脇役と会長
よく来ますね。大野相模は呟き、学園の人気者である男をちらり、とも見ずに手元の本の頁を捲った。学園の会長である勢野隆祐は大野の前に腰掛け、そうだな。と、頷く。転入生を追いかけていたはずの勢野が、何故自分の元に訪れるのか、大野には分からなかった。同室者から会長はお前に気があるのかもしれない。と、言われたところでもしも話に興味すら抱けない大野は、今日も今日とて、図書室の一席で読書に勤しむ。
「そう言えば」
「な、なんだ!?」
「……大したことではないのですが、転入生はどうなさったのですか」
途端、沈んでしまった勢野を見たところで、大野の態度は変わらない。なまじ容姿が整っている為に、親衛隊も気軽に手を出してこれないのが不幸中の幸いだとも言えた。大野は親衛隊持ちであり、恐らくそれを、勢野も知っているのだろう。そうでなければ、気軽に人の目がある場所で、自分と接触しようとは思わないはずだ。と、大野は思う。
「どうしても分かり合えない」
「………はぁ」
「アイツ、と、言うか、アイツら、なんなんだ?」
「…………はい?」
途端、始まった勢野の愚痴に、そう言えば彼はいつも自分の目の前で、仕事を片づけていた様な気がする。と、思った大野は、噂とは宛にならないものだ。と、そんなことを思った。

003:俺ばかり好きでくやしい//人気者と平凡
くやしい。とは少しばかり違うのかもしれない。相手は此方の気持ちすら知らないのだから。知ってもらおうとすら、していないのだから。何せ自分は、彼の親衛隊に入っていない。彼を堂々と見つめる事もしなければ、接触を持つようなこともしていない。こんな、恋情ばかり抱かせる彼は、なんてひどい人なのだろうと思う。親衛隊に所属していたところで、彼と話せる時間はないに等しい。クラスメイトであっても、彼と話せる時間などない。
「………十回目」
唐突に聴こえてきた声に、視線を向ければ好きで好きでたまらない人が立っていた。彼は自分から話しかけないという噂だったのに、なんということだ。と、思いながら、彼の事を見つめ、回転しない頭をどうにかしようとしていれば、その反応は初めてだ。と、少しばかり嬉しそうに呟かれた。教室内には僕等しかいない。彼は、いつもならば放課後のHR後すぐに部活に向かってしまう。今日は、そうではなかったのだろうか。そう考え、手元の時計に目を向ければ、時刻はいつの間にか七時半をさしていた。いつの間にか、外も昏くなっている。
「何が、十回目」
「溜息」
幸せ、逃げちゃうよ。と、なんとも夢見がちな言葉をかけられた僕は、思わず笑ってしまった。その笑みに、彼が見惚れていた事になど、気付かなかった。

診断元 → http://shindanmaker.com/125562


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