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どーしても君がいい!
@18zzz_hq




 大学に入ってすぐに誘われたカラオケ合コンとやらに、俺と真ちゃんは無理矢理数合わせとして入れられていた。つーか、真ちゃんなら絶対行かないと思っていたし、それに乗じて俺も行かないつもりだったのに、真ちゃんは今日のラッキーアイテムがカラオケボックスだからと謎のやる気を見せていたのだ。ラッキースポットの間違いっしょ、なんて笑っていたのは十分ほど前。そして渋々訪れたカラオケボックスにいたのは、男が三人と女子五人。

 その中に、俺の天使は存在していた。

「なまえちゃん、そのジュース美味しそうだから一口ちょーだい」
「あ、あの、えっと…は、い…」

 天使の名前は苗字なまえちゃん、しかもどうやら俺と真ちゃんと同じ大学で、同級生。なのに、俺なんで知らなかったんだと大真面目に考えた。ツヤツヤの黒髪に、焼けていない白い肌と、ふっくらとしたピンクの唇。俺の好みど真ん中、つまり一目惚れ。なんと言っても恥ずかしそうにしている様がめちゃくちゃ可愛い。人見知りなんだなーきっと。俺と完全に真逆だ。というわけで、得意のコミュ力でなまえちゃんの隣をゲットしてーー…今に至る。

「サンキュー!」

 おずおずと差し出されたピーチシャーベットジュースをナマエちゃんの手ごと掴んで、彼女が口をつけていたストローに俺も口をつける。うあああヤベエ間接キス! ガキかって? そんなのどうでもいいもんね。

「た、高尾君…!?」
「てかピーチジュースの上にシャーベットのってるだけなのになんでこんなうめーの? なあ?」
「高尾、固まっているのだよ」

 俺と対局の位置に座る真ちゃんの隣では、パンツの見えそうなミニスカートを履いた茶髪の女の子が真ちゃんへ積極的にアタックしている。それにも動じないとは、その内本当に賢者にでもなってしまうんじゃないだろうか。そんな真ちゃんの一声になまえちゃんの顔を下から覗き込むと、マグマを噴火させたみたいに顔を真っ赤にさせていた。

「もう高尾君、ちょっとは手加減してあげてよ」
「へ?」
「なまえは男の子に慣れてないんだよ、まあだから無理矢理合コンに連れてきたんだけどさあ。すっごい人見知りだしこんなだから一度も彼氏とか作ったことないし、心配で心配で」
「や、やだ、リナちゃん…!」
「だからお手柔らかにお願いね!」

 ばっちんと見事なウインクを俺にキメた、リナちゃんと呼ばれた女の子はそう言うと、楽しそうに他の男子の中に混ざっていった。へえ、まあそんな気はしてたけどさー。コップごと掴んでいた手を離して机の上に置くと、カラオケボックスにかかせない筈なのに、誰一人として使っていないマイクを手に取って息を吸った。

「高尾和成! 緑間の真ちゃんと一緒にデュエットをさせていただきまっす!! ほいマイク」
「なんでそうなるのだよ。歌うなら一人で歌え」
「まあまあ〜いいじゃん〜、ベビーローテーションでいくぜ〜!!」
「いいぞ高尾! 緑間〜!」
「ふざけるな。俺はやらん」
「アッレー? 今日のラッキーアイテムカラオケボックス≠ナ人事を尽くさないとか…真ちゃん今日命日じゃね?」
「マイクの音量を上げろ」
「ブッハ!! マジちょろすぎっしょ!!」

 ビシッと立ち上がった真ちゃんの姿に、シメシメなんて笑いながら送信ボタンを押した。隣で未だ固まっている様子のなまえちゃんの頭にそっと掌をのせてみると、びくっとした後にまん丸な黒目をこれでもかと開いて、ロボットみたいに首をギギギと俺に向けた。何この天使ほんと罪作り。

「高尾君がなまえちゃんの緊張を解いてあげよう」
「あ、う、わ、ん」
「ブフッ、何言ってっかわかんねーって!」

 よしよしと撫でて、鳴り始めた音楽に合わせてマイクを持っている手を使いハートマークを作ってみる。外野から「高尾可愛いぞーー!!」とダミ声が聞こえてきたが、そのダミ声も真ちゃんの「I want you」というハイパー意外美声によって静まった。あ、なまえちゃんが緊張気味にだけど、少し笑った。笑うと何倍も可愛いなコンチクショウ。なまえちゃんを少しでも笑わせた真ちゃんに少しムカついた。






「なまえちゃんどーだった? 俺と真ちゃん」
「と、とっても、面白かった…です…」

 カラオケボックスから出て、今度はカフェにでも行くか〜なんていうメンツの後ろを歩く。なまえちゃんの隣は譲らない。チラチラと振り向くヤツもいたが知らねーし。真ちゃんの隣には相変わらずパンツの見えそうな茶髪の女の子が歩いていた。

「ちょっとは緊張取れたんじゃね?」
「え、ええと…あの、う、」
「もしかして、高尾君が可愛いすぎて悶絶しちゃったとか」
「ち、違うよ…! あの、確かに、可愛いと、は、思いましたけど…!」

 必死に言葉を紡いでくるなまえちゃんが本当に、マジで可愛い。こんなの一目惚れっていう一言で済まされるのかってほどに、たった二時間程度のカラオケで目の前の天使に溺れかけている。

「あのさ」
「う、?」
「なまえちゃんがよかったら二人で合コン抜けねえ?」
「……な、っな…ぬ、!?」
「なんかもー我慢ならないんだわ。俺こーいう感覚初めてでさ。初めてカラオケ入った時から、なまえちゃんに一目惚れしちゃってんの」
「あ、…や、え、ええ?!」
「真ちゃん風に言うと、これは運命なのだよーってやつ? って、真ちゃんのことそんなに知らねえだろうし分かんないか。つまりアレ、もー俺初めて会ってからなまえちゃん以外全く見えてない」

 もぞもぞしているなまえちゃんの左手を右手で掴むと、指と指の間に俺のを絡めてみる。逃げる素振りはそんなにはないけど、めちゃくちゃ焦っているのかすごく熱くて、しっとり汗をかいていた。柔らかい。ちらりと真ちゃんがこっちを見たことに気付いてひらひらと手を振ると、フン、と言いたげに前を向いた。
 頑張れってか? ツンデレ真ちゃんマジ愛してるわホント。

「み、んな行っちゃ、う…リナちゃん、も…!」
「だーいじょーぶだって」
「た、高尾く、…わ、たしその…、あ、の…」
「んー?」

 人気のない細い路地裏に連れ込んで、石の壁にゆっくりと押し付けてみる。こういうの、一回やってみたかったんだよね、壁ドンってーの? ああでも、そんなに余裕を保ってもられなさそうだ。

「男って分かんないことだらけ? だったら俺と、お付き合いからどう?」
「うう、…?」
「とりあえず色々教えてあげるってこと。ま、俺のことしか教えてあげるつもりねーけど。それに高尾君と付き合い始めたら、もれなく楽しい毎日がついてくんよ?」
「…で、でも…」
「逃がすつもりもないから」

 そういうと、真っ赤になったなまえちゃんの顔から、恥ずかしすぎたのか涙がぽろぽろと溢れだした。やっべ、いじめすぎた。慌ててごめんごめんなんて頭を撫でてやると、「吃驚、して」なんて薄っすら笑っている。

「俺と付き合うってことでいいってこと…?」
「た、高尾君とつきあった、ら…たのしい…ん、だ…よね…?」
「…」

 動機は割と不純っつーか、俺が言ったことだけどさ…。まあいいかと頭を掻くと、心配そうに見つめるなまえちゃんにもちろんと頷いた。あー、マジで可愛い天使っつーかもうほんと女神。オオカミになっちゃうまでに早いとこなまえちゃんの心もゲットしよう。頑張れ俺。

2016.09.11