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西標識






電子の末端まで/第三回公式イベント(北明司)


管理室の机には飲みかけの珈琲が二杯置いてあった。
恐らく此処に居た警備員が侵入者の通報を受けて慌てていたのだろう。
「それにしたって、鍵開けっ放しって言うのはいただけないねぇ...」
容易く侵入できたことに驚きと呆れを込めて、明司は呟く。
とはいえ、警備員が居ようが居まいが明司は侵入するつもりではあったのだが。
管理室の内側から鍵を掛けると、明司は倒れていた椅子を起こして座る。
彼の目の前の壁には一面に大量のスイッチといくつかの画面が並ぶ。
画面の殆どは砂嵐で、明司は繋がっている監視カメラが破壊されているからだと直感した。
「まぁ、予備を起動させればなんとかイケるはずだけど」
ぼそりと独り言を呟くと、明司は机上のキーボードを手元に引き寄せる。
机には壁と同様にスイッチが並んだ装置があり、隅に放送用マイクとコンピュータが寄せられていた。
箱形の画面も近くに引き寄せ、画面の下にあるボタンを押す。
ぶうん、とモーターの低い音が鳴ってパスワードの入力を促す起動画面が表示されると、明司はポケットから何かを取り出した。
研究室から持参した、白いメモリーである。
明司はキャップを外すと、メモリの先端ををハードの挿込口に押し込む。
瞬間画面が暗転し、白い文字列が浮かんでは消える。
それを見て、明司は満足げに口元を歪ませた。
「この調子なら、大丈夫そうだね」
明司は子供の様に嬉々とした表情で壁に取り付けてある電話に手を伸ばす。
そのままボタンをプッシュして耳元に受話器を当てて数秒、何処かに繋がった。
「やぁやぁ白野、プログラムは正常に働いてるみたいだよ。
そうだなぁ...あと20分もすれば適用できるかなぁ」
「そうか、そのままうまいこと足止めしてくれれば助かる」
電話の相手である白野は珍しく早口で、いつになく焦っている様だ。
明司はその様子を訝ったのか、少しだけ眉根を潜めて
「どした、何か焦ってるみたいだけど」
「そろそろ港に向かう。
懐中電話は持参しないつもりだから暫くは連絡できそうにない」
「おぉ、ついに例の匣をお出迎えと言う訳か。
まぁせいぜい頑張ってくれよ」
「言われなくてもあんな小汚ない鼠共に匣を渡す気はない」
「そう言うと思ってたよ、白野の事だからさ」
変わらないねぇ白野は、と言いながら明司はけたけたと笑う。
その間にもコンピュータにはメモリからデータが流れ続け、その度に画面では文字列が波の様にうねる。
「まぁ、見てなって」
にやりと笑う彼を他所に、コンピュータは低い唸りを上げ続ける。
明司の淀んだ赤い眼には、今日の事変はどう映っているのか。







おっさんとモブな白野さん。
スパートかけると文章がクソになりますね。






 





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