黒尾鉄朗生誕祭2014と銘打って
Twitterで書いていた黒夜久140字SSのまとめ
TETSURO Happy Birthday!!








※ラスト一週間は、連作になります〜^^

バレー部の皆と歩く通学路。『なぁ、黒尾』 一歩先を行く彼を心の中で呼んでみる。後輩らと話し込んでいる彼は、夜久の視線に気付くはずもないし、そもそも気付いてもらおうとも思っていない。別にそれは恋人の余裕とかではなくて、ただ楽しそうにしている彼の姿を見るのが好きなだけだった。

2014/11/10


夜久達が出逢ったのは、言うまでもなく二年前の春のことだ。期待に胸を膨らませて向かった体育館。新入部員の中でやけに目つきが悪いやつがいるな、と最初は思っていた。胡散臭くも人当たりの良い笑顔は、まるで心が全て見透かされているようで、これから彼と上手くやっていけるか不安になったものだ。

2014/11/11


けれども、その不安はすぐに払拭された。そして出会って数ヶ月が経った頃、夜久は彼の新たな一面を見た。昔見たゴミ捨て場の決戦をこの目でもう一度見たいのだ、と言った彼の横顔はとても美しくて、蝉の鳴き声が響く体育館裏で、ほんの一瞬だけ、彼以外の全てのものが存在しなくなったように思われた。

2014/11/12


いつしか夜久にとって黒尾の側にいることは当たり前となっていた。黒尾はいつだって夜久の一歩先にいて、夜久はそんな彼のことを、バレー選手として、友人として、非常に評価していた。そんな彼に対するまっすぐな尊敬心は日に日に大きくなっていき、夜久は無意識のうちにその背中を視線で追っていた。

2014/11/13



最初、その感情が限りなく恋慕に近しいものであることに夜久は気付いていなかった。夜久が自分の気持ちを自覚したのは、ほんの些細なきっかけだった。ある日の昼休み、同じグループの友人らとの間で俗に言う恋バナの話で盛り上がったのだ。好きなやついる?と問われ、最初に思い浮かんだのが彼だった。

2014/11/14



過去には、恋焦がれてやまないその背中が遠ざかったこともあった。研磨との関係を知った時、夜久は自ら手を引こうとしたのだ。自分では黒尾の一番になれないと思った。
けれども、それを黒尾が許さなかった。黒尾は、自分の気持ちから逃げ出そうとした夜久の背を追いかけ、そしてその手を取った。

2014/11/15



その時、後輩達と談笑していたはずの黒尾がふっと振り返る。そして、夜久を目に留めると周囲にはわからないくらい微かに目元を綻ばせた。『衛輔、おいで』唇の形だけで名を呼ばれる。皆がいるところでその呼び方をするな、といつも言っているというのに。怒ってやろうと思ったが、上手くいかなかった。

2014/11/16



駆け寄ると当たり前のように空けられた彼の左側。緩む口元を隠しつつ右側を見上げれば、彼が小さく笑うものだから、溢れる想いを抑えきれなくて「ありがとう」と呟いた。生まれてきてくれてありがとう、俺を選んでくれてありがとうーー。きっと勘の良い彼には伝わったはず。お誕生日おめでとう、鉄朗。



2014/11/17



その声に一目惚れした。「定期、落としましたよ」と優しく肩を叩いた指先、穏やかな微笑みに、俺はきっと恋をしたんだ。電車で出会ったたった一度きり。二度と会えるなんて思っていなかった。最初に顔を思い出せなくなった。指先の優しさを忘れた。声を忘れるその前に、もう一度逢いたい。

(電車で一度だけ出会った黒尾に恋をした夜久さんのお話。)

2014/11/09



いつもより早く目が覚めた夜久は、恋人を残したままベッドを出た。用意を終えて夜久が寝室に戻ってみると、眉を顰めた恋人はパタパタとシーツを叩き、手探りで何かを探している模様。何を探しているかなんてすぐにわかったから、夜久は少し笑ってから、その腕をちょんちょんとつついてみた。

(同棲しているふたりのお話。)

2014/11/08



まだ彼は帰宅しない。今から帰るって連絡が来ていたから、もうすぐ駅に着くだろう。空模様が怪しかった。俺は傘と携帯だけを持って駅に向かった。「もしもし、鉄朗? 今から傘持ってそっち行くから、駅で待ってて」「ありがとな」って短く言ったその声が、今も昔も大好きだなぁと思った。

(同棲してます。)

2014/11/07



今日は良いもんを見た。緩む口元を抑えていたら、機嫌が悪い彼がこちらを睨み付ける。電車で別れる時も、絶対言うなよ?と念押しされた。しかし、誰が言うものか。あんな可愛い姿を他人に教えるわけがない。黒尾は、満面の笑みで猫に話しかけていた夜久の姿を思い出し、再び口元を押さえた。



2014/11/06



朝が冷えるようになってきた。おはよ、と眠い目をこすりながら挨拶をすれば、おはようと声が返ってくる。視線を感じて見てみれば、下からじっと見上げる茶色い瞳。こちらが見つめると視線はふっと逸らされてしまう。俺はそっと身を屈めた。
馬鹿、と言った彼の頬は林檎のように紅かった。

(同棲している黒夜久ちゃんの朝。)

2014/11/05



ふわりふわり――。ドライヤーの熱風に吹かれ、指の間から逃げていくミルクティー色の髪。首筋に風が当たるのがこしょばゆいのか、小さく身を捩らす様子は、まるで子猫のようだ。この髪に触れられるのは自分だけの特権。「終わったよ」と声をかけてから、身体に腕を回してぎゅっと抱き締めた。



2014/11/04



「ねぇねぇ、黒尾は好きな子いるの?」クラスの女子が黒尾に尋ねる。彼女が黒尾に気があるわけではないのはわかっている。だってこの子、彼氏いたはずだし。わかっているのに少しだけモヤモヤした。そして、「いないよ」っていつものようにさらりと答えた彼を見てなぜかほっとした。



2014/11/03



元々、早起きは得意ではない。けれども、せめて合宿の間だけでも寝起きの彼を独り占めしたいと願っていたら、三回目の合宿をする頃にはすっかり早起きが日課になっていた。

「さっさと起きろ、主将さんよぉ」わざと乱暴に布団を剥いだ。意外とあどけない彼の寝顔にときめいてなどいない。



2014/11/02



今日はついてなかった。雨が降るなんて聞いてない。俺は傘を持っていなかった。どうしようかと泣き空を見上げていると、ふっと黒い影が顔にかかった。「…いれてやるよ」と黒尾は言った。
ありがとう、って家の前で別れた時、俺は彼の肩が濡れているのに気付いた。けれど何も言えなかった。



2014/11/01





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