『ふわああっ!』
 
 
 
五番隊舎の傍を通ったとき、俺の耳に届いた悲鳴は、なんともガキっぽいものだった。
 
 
 
この悲鳴が誰のものかなんて、確かめなくても分かる。
 
 
 
 
『‥雛森っ?』
 
 
 
あの“幼馴染み”はまたコケたのだろうか?
それとも、書類でもぶちまけたのだろうか?
 
 
 
‥少なくとも声の感じからして、危険な状況とかではなさそうだ。
 
 
もしそうなら、俺はこんなのんびり歩いてはいない。
雛森のもとへ、瞬歩で駆けつけている。
 
 
 
 
 
 
‥けど、あいつをからかう機会としてはうってつけかもしれない。最近は、そういう機会がないから。
 
 
 
霊圧は、修練場の辺りだった。
 
 
 
――――‐‐‐‐ 
 
 
 
 
『‥‥‥‥』
 
 
修練場の脇にある水道に来て、俺は固まった。
 
 
 
 
 
『あれ、日番谷くん‥?』
 
 
 
少し長めの黒髪を肩にかけながら、水をしたたらせる少女。
‥いや‥少女というほど、幼くもない。
 
 
 
 
『雛森‥?』
 
 
 
何やってるんだ、と呟いてみる。
 
 
呟くのも当たり前だ、頭から水浸しになっているのだから。
 
 
 
『えっと、ちょーっと手が滑っちゃって‥』
 
困ったように、雛森は笑った。
 
 
手に持っているホースと、側に位置する花壇から見て‥何が起きたのかは一目瞭然だった。
 
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