白。
 
       白。
 
 
   白。
 
 
 
真っ白なベッドに寝転がって、真っ白な天井を見る。
 
 
真上に伸ばした左手は、当たり前だが届かない。
 
 
 
『退屈‥』
 
それしか言うことがないから、言ってみる。
 
 
‥そもそも退屈って何?
そんな滑稽な。妙な。考え事をするのは日常茶飯事。
 
 
 
この部屋で“大事に”育てられてきたあたしは、白以外の色をあまり知らない。
 
あたしの父様は国王で。母様は、どこの誰とも知らぬ人。
 
どんな経緯があったかも詳しく教えてもらえずに、長い間ここにいる。
 
世間の人はきっとあたしを知らないし、隠さなければならないらしいあたしの存在は、この城に住む人もいくらかは知らないだろう。
 
 
毎日、とりあえず呼ばれる家庭教師と言葉を交わして。
後はずっと、白い天井を眺める。
 
 
抜け出そうとしたことはあった。
でも、すぐに捕まって連れ戻された。‥そんなことが何度も続けば、逃げる気力も失いかけて。
 
 
 
 
けど。
 
 
もう、もうたくさん。
 
 
白い天井にもう一度、大きく手を伸ばして。
 
 
『‥外の世界はどんな色?』
 
 
そう、呟いた。
 


‥次の瞬間には、あたしの手は誰かに握られていた。
 

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