『じゃあ、俺と来るか?』
 
 
至近距離で声が鳴った。
 
 
『‥ッ!?』 
 
 
伸ばしたまま握られた左手。
上に乗ってきた身体。
翡翠色の、瞳。
 
 
初めて、見た。こんな綺麗な色。
 
 
 
『‥盗賊?』
 
 
『へぇ‥わかってて騒がないのか?姫様』
 
 
なんであたしを知ってるんだろうとは思った。けど怖い、とは思わなかった。
むしろ妙にわくわくする。

‥だって新しい色に出逢えた。理由はそれで充分。



 
『‥お前、これ食う?』
 
突然そう言った彼はバラバラとあたしへと雨を降らせた。
 
 
 
  赤。
 
        黄。
 
 
    桃。
 
          橙。
 
 
  緑。
 
 
もっと。もっといっぱい知らない色が降ってきて。
 
それは“キャンディー”の雨。
 
 
『‥毒でも入ってるの?』
 
笑いながら訊けば、面食らったような顔をして。
すぐにいたずらっぽく笑い返して答えてくれた。
 
『睡眠薬なら』
 
 
彼はあたしの身体の上に散らばっているキャンディーを一つ掴んで、コツンと額に当ててきた。
 
それが妙にくすぐったくて。
俗に言う“押し倒されている”体勢なのに、全然そんなこと感じなかった。
 
『‥綺麗な色』
 
桃色のキャンディーをかざして。
 
 
『連れていってくれるなら、連れてって』
 
握られたままの左手に、力を込めた。
 


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -