これの続き





はさみを持って、神童の波打つような茶色の髪の毛に指を通す。さらさらとなかなか、掴めない。まつげ長いなあ。お姫様かよ。
「ちょっと、雪村」
「なに」
「何してるんだ」
焦ったように身を捩らせた神童に、いやあ、髪の毛をひと房、頂こうかと思って。そう言ってチョキチョキとはさみを見せた。神童は疑問と不安の表情を浮かべる。
「なんで」
「お守りにする」
お、ここらへん、良さそう。丁度良さそうな部分を探し当てて、はさみをあてがうと、今度こそ神童は驚いて、待ってと言った。
「ほんとに?」
「ほんとに、本気で」
「えー…」
嫌そうな顔をしたが、観念したのか大人しく、頭をこちらに傾けた。「…ほんとに」「本当に、本当」往生際が悪いぞ、神童。
神童が頭を揺らすから、さっきの髪を見失ってしまった。俺はまた、髪を解き始める。
「なんで?」
「だって俺、明日には帰るし」
「ん、ああ、そうか…」
途端につまらなそうに、窓の外に視線を滑らせた。
「やだなあ」
「だからお前の一部でも持って帰ってやる」
「ふうん、じゃあ後で雪村のも貰おうかな」
「どうぞ」
あ、見つけた!ひと房摘まんではさみを入れると、また神童が待ってと言った。今度は何だよ!
「待て雪村、」
「なんだよ、もう切るぞ」
「うわ、やっぱりやめ…一緒に切ろう、いっしょに!」
怖いのか不安なのか、涙目で訴えた神童は、はさみに手を添えてきた。じゃあいくぞ、と一応声をかけて、手に力を入れた。開いたはさみの幅が徐々に狭くなる。


ちょきん!


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