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広大な黄金色の大地にチョコボの足跡が横並びになって続いていく。
砂に残るものはそれぐらいで、今までと同様に手がかりを見つけることは出来ずにいた。

砂漠を一度抜けたあたりで休憩をとっていると、ルノアが思案顔で飲み物を口にしていた。口数がいつもより少ない相手に“何かあるんだろ?”と声をかければ、彼女は真剣な面持ちで俺の方を向いた。

「エドガーには酷かもしれないけれど、聞いても?」

「ああ、構わない。何だ?」

「もしも予測した通り地中に城が埋まっていたとしたら人は生きていられるの?」

今の自分達の行動に意味があるのかどうかを俺に問い質す彼女。
コーリンゲンで見つけられなかったことを含めて、やるべきことの優先順位を改めようとする賢明な判断に感心しながら、俺はフィガロがどんな建物なのかを詳細に相手に伝えた。

砂漠という孤立した大地で一つの城が成り立つ為にはそれが可能なだけの堅牢な建物や多くの物資、それ以外にも自給自足が出来る機関が無ければならない。ましてや地中で潜航を行う特殊技術にはどうしても予測不能な事態が起こる可能性がある。

「先代の事故を教訓に有事に備えて城を改善していった。もし地中に埋まっていたとしても必ず生きている筈だ」

世界崩壊から数ヶ月が経過してるが、望みがあるからそこ今も探しているんだとルノアに強く語れば俺を見つめる彼女は分かったと深く頷いた。

「フィガロを信じて待つ。それが今の私達に出来ること」

「ああ」

彼女の言葉に今度は俺が頷き、砂漠の捜索を再開する。
俺自身もフィガロの無事を疑わないが、その全てが有限では無い。いくら自給自足をできたとしても、循環する空気だけは無限ではないからだ。それが終わりを迎える前に必ず見つけだしたいと強く願ながら再び再会できる日を信じて待っている。

砂漠の捜索から戻ってきたその日の夜、彼女にニケアの町にはチョコボが居るのかどうかを尋ねられ、俺が居ると答えればルノアはコーリンゲンに向かいたいと話を持ち出した。
ティナと別れて暫く経ったことや魔石を探したいという別の目的もあるからこそ、出来るだけ色々な場所を巡りたいと思っているそうだ。

「私1人で向かおうと思う。無事を確認したいだけだし、城の事を考えればエドガーがここを離れるのは適切じゃないから」

「分かった。今度は俺がここに留まるから君は自分の目的を果たしてくれ」

相手の意見を容易く受け入れられたのは、お互いが出来ることの範囲を広げたいと思っていたからかもしれない。この世界で仲間と出会う確率の低さと進展しない現状に多少なりとも焦りがあったのも本当だ。それでも慎重に物事を進められるのは、こうして話を出来る相手がいることが大きいと強く感じる。

「俺の方でも魔石を探してみる。ルノアもあまり無理はしないようにな」

「それはエドガーも同じ」

自分もコーリンゲンに再度確認に行くことを伝え、何かあった時はリボンを使うことを改めて確認した。
再会してから大した時間も経たないうちに別々に行動することを決めた俺たちは次の船が到着した日に出発しようと話した。それまでの間は共に探索しながら準備に時間を充てたり、サウスフィガロの立て直しに力を貸して過ごしたのだった。

数日後、港に到着した船に乗り込むルノアを以前とは反対に俺が見送る側になる。

「心配して待っているからな」

「私はしない」

もはや合言葉に近いやり取りを交わし、最後は片手を上げて互いに別れを告げる。ルノアはそれを把握した上で、声が聞こえるか聞こえないかの瀬戸際になってから嫌味のような言葉を俺に残していった。

「“体には十分気をつけて”」

俺の過去の失態を臭わせる言い方は間違いなくわざとで、それが表情からも見て取れる程だった。だが、俺をからかうような彼女の笑みを見た時、言い返すことも出来ずに打ちのめさた気分になる。

「反則じゃないのか………それは」

結局、ルノアの“気をつけて”という言葉も、心配の延長線にあるような気がするし、俺に対する新しい反応は掛け合わせた言葉による予測もしていなかった副産物だ。それはまるで歯車が噛み合い連鎖する動きに酷似していて、だからそこ自分をここまで夢中にさせるのかもしれない。

船に乗っている彼女の鮮やかな色の髪が風になびく様子に目を奪われながら、その姿が見えなくなるまで相手を見送ったのだった。


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