EP.44
獣ヶ原と言われる大地で、出会った少年の名前は、ガウ。
川に流されていたところを助けて貰ったり、色々な要素が関わり合って、こうして出会い私達の仲間として一緒に旅をすることになった。
数日を要して広大なフィールドを抜け、ナルシェを目指して向かうのは、ガウの宝物があるらしい三日月山というところ。

ガウが先頭になって入った洞窟は、雰囲気からして蛇の道という名前に見合った場所だった。そこに入るなりガウは、あちこちウロウロと何やら探し始める。

三人で顔を見合わせていると、マッシュは思いついたように言う。

「ユカ!カイエン!ガウの言ってたピカピカがここにあるんだ!」
「そうなの??」
「で、ガウ殿、どこにあるのでござるか?」

カイエンさんが尋ねると、ガウは両手を挙げながら「わすれた!!」と楽しそうに言い放つ。がっくりしながらも、私たち3人は至って前向きだ。

「探してみるか?」
「そうだね、皆で探せば見つかるかもしれない」
「仕方ないでござるな」

四人でウロウロウロウロ。
あちこち回りながらきょろきょろ。
すると何故かマッシュがこっちじゃないなと、キッパリ言い放つ。

「え?どうして分かるの」
「勘だ!勘!」

きっと野生的な勘なんだろうなぁと思いつつ進んでいると、向こうからガウの声が響く。皆で駆け寄り、掘り起こされた場所をのぞき込んでみると、そこには小さな瓶が埋まっていた。

「ポーション…」
「こ、これが、ガウ殿の宝でござるか?」

尋ねると首を横に振って否定するガウ。どうやらこれではないみたいなので、別の場所へと向かうことにした。

そこから少し奥へと進んだ辺りで、ガウは突然、崖の縁に何故かマッシュだけをおびき寄せる。しかも、谷底を覗くように仕向けるなんて何かを企んでるようにしか見えなかった。

「なんだよガウ。何かあったのか?」

下を見るマッシュの背後にそーーっと近寄っていくガウ。
直後、やっぱりなって思った行動に出たのだった。

「ガウ!!」

大きくて気迫のある声に驚いたマッシュが、それに負けないくらいの声量でいきなり叫ぶ。

「ご、500ギル入った俺のサイフがッ!!」

ゲラゲラと笑うガウにマッシュが怒るけど、全くもって意に返さず楽しそうに笑い続けている。肩を落として落胆するマッシュを、カイエンさんと二人で慰める。

「まぁまぁ、マッシュ殿、ここは拙者に免じて」
「ガウもまだ子供だし、お金落としたのは悲しいけど、まだ貯えはあるから。ね?」

2人でフォローに入ったけれど、解せないマッシュは怪獣のように叫ぶ。

「うが〜〜〜〜〜〜っ!!」

何だが、ガウもマッシュも何処となく似てる雰囲気があるなぁと感じたけど、今は内緒にしておこうと思う。
以降もあちこち探したけれど、宝物は見つからず、出口まで近づいていた。もしかしたらこのまま見つからないかもしれない、と諦めかけていた時、ガウが何かを思い出したように突然、ガサゴソと辺りを掘りはじめる。

土をばらまきながら掘り進めていくと、そこから段々と見えてきたのは、ちょっと大きくて割と重たそうな球体だった。

「これが、ピカピカ、でござるか?」
「たから!たから!」
「単なるガラス玉ですのう」

顎に手を置きながら、まじまじと鑑定しているカイエンさんの隣で、マッシュは掘り出した球体を一つ手に取り、泥を落とし始める。内側のガラス部分をゴシゴシと擦っていたと思ったらいきなり変な事をやり始めたではないか。

「頭がスッポリはいるぜ」

まるでそれはヘルメットみたいにピッタリと頭にフィットしていた。しかもガラス玉をかぶったままニヤリとしてみせる。

「は、は〜ん。これ使えるかな?」

閃きました!と言わんばかりのマッシュの表情と口調に何故か背筋がぞっとした。
そして、さらに続いた言葉に益々ぞっとした。

「これをかぶれば、水中でも息ができるかな…って?」

完全な憶測と合理的想像力を働かせた答えが導き出されていた。けれど、何をもってしてそんな事を言うのかが分からない。

「な、何を言ってるのかな??水なんて何処にも無いと思うけどなぁ〜…」
「お?ユカ知らないのか?」
「え……何が??」
「マッシュ殿、ユカ殿は湯浴みに向かった後ではござらぬか?」
「ああ!!そうか!あの時か!カイエンと村の人に詳しい話を聞いたのって」
「そうでござるよ」

なる程なる程、という具合に2人は納得しているようだが、こちらは全く納得なんて出来ない。いや、もしも納得してしまえば、この先に待ち受けているものが何なのかを認めてしまうという事じゃないか。

「じゃあ、行くぜ!」

恐ろしく強引に事が進む中で頑張って抵抗してみたけど、マッシュがそれに対して正論をぶつけてくる。

「教えたって結局嫌がるだろ」
「じゃあ、そうなるような大変な状態なの!?」
「とりあえず、見てみようぜ。な!!」

ずりずりと引き摺られて出口を出れば、リターナーを脱出した時と酷似した雰囲気を感じた。ゴウゴウと低音で響く水の音が響き、見るのすら嫌でしゃがみ込んでいると聞こえて来たのは2人の感想。

「激しい流れでござるな…」
「確かに…」

あの、バレンの滝ですら簡単に受け入れたマッシュがそんな事を言うなんて。
もうそこは人が踏み入れてはいけない場所に違いないんだ。

「しかし、蛇の道を使わねば、兄貴達とは合流できないし…」

少し考えただけで結果行くことは変わらないのがこのメンバーの流れ。
それに初めて加わったガウが、川に恐る恐る近寄って行く。

「!!!!!」

だけど、すぐに戻ってきて自分と同じようにしゃがみ込んでしまった。

「ガウ………」
「やっぱり怖いよね…私も同じ」

2人で小さくなっていると、マッシュとカイエンさんは準備万端なようで、小脇にヘルメットを抱えながらこっちを見て笑っていた。
まったく笑えないガウと自分だったが、ヘルメットを持った二人がスタスタと寄ってくると強制的にそれを被せてくる。

「じゃあ、いくぜ!!」
「さっきも聞きました!その台詞!」
「大丈夫だ。川の流れに乗ればあとは勝手にニケアに着くみたいだしな」
「列車に乗るみたいに言わないでよ、川なのに…」
「心配ない。今までだって大丈夫だったろ」
「そうだけど……」
「何かあったら俺が面倒見てやるって!」

そう言って満面の笑みを見せるマッシュ。この笑顔を見ると信用せずにはいられなくなるし、何故か安心出来てしまうから不思議で。

説得され、渋々ながら崖の端まで身を寄せたけれど、その流れはレテ川の比ではなかった。不安に駆られる自分だけれど、あの時、隣にティナが居たように、今はガウがいる。彼よりも年上の自分が怯えていてはいけないと、恐怖を押し殺して隣にいるガウの手をぎゅっと握る。

「一緒に行けば大丈夫」
「うう〜……」
「ダメ??」
「ガウ……」

何だか子犬の様な目線でこっちを見るガウを見たら、どうにかしなくちゃいけないという気持ちが凄く強くなった。

「それじゃあ、こうしようっか」

正面を向き合ってガウを抱き締めて、飛び込む恐怖を見えなくしてしまえばどうだろう。

「一緒に飛び込んじゃえば怖いものナシ」
「ガウ」
「じゃあ、背中に腕を回してギュってして。飛び込むから」

準備をしてる自分の隣にマッシュが来ると、心配して声を掛けてくてる。
だからしっかりと頷きながら、こう答えた。

「うん、大丈夫だよ。…だってさ、マッシュもしてくれたでしょ?こうやって」

凄く安心できたからと付け足して、照れた笑いを相手に返し、腕に抱いたガウと一緒に荒れた川へと共に飛び込んでいった。

流れていく川の中で、呼吸と視界が保てる川底には別世界が広がっていた。
身動きが不自由になる中で、モンスターとの戦いが起こり、自分と一緒にいたガウもマッシュ達と一緒になって戦っていた。

流れた先に時々陸地があり、そこで暖と休憩をとりながら進んでいくが、海底を流れる水の冷たさと流れの激しさが恐ろしい勢いで体力を奪っていくのがわかる。
だけど、冷たさが幸いしてか、痛めていた足首からは痛みを感じることはなかった。

こんな所でゆっくりしている時間はないのは分かっていたから、弱音は吐かず自らを鼓舞して皆と共に冷たい海流へと身を投じること2回。

遂に私達は、蛇の道と言われる海流を渡りきり、港町ニケアにどうにか到着することが出来たのだった---。


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