EP.76(2)
―――…俺は一体、ユカの何なのか。

友達、旅の連れ、仲間。
どれが一番近いのかって考えてみるけど、全部が当てはまる。
なのに、そうじゃなくてもっと違う感じがするのは何でだろう。

だからこそあの時、俺はこうだってハッキリ言えなかったんだ――。

飛空挺から離れ、一人沈んだ気持ちを抱えたまま、呆然と立ち尽くしていると、カイエンとガウがやって来て何故か俺に対して謝ってきたんだ。
ユカが居なくなったことに気づくことが出来なくてすまないって。
だけど、別に…誰のせいでもない。
俺は戦いに行って、セッツァーやカイエン達も普通にしていたのに、そこから居なくなったのはユカの方だから。

セッツァーに俺が八つ当たりすること自体、本当は間違ってるんだ。
だけど、どうしても押さえ切れなかった。

気にすることないって二人に伝えて、また一人になると今度はティナが来て、心配そうな顔をしながらユカを気にしてた。
何か嫌な事があったのかなとか、今どこで何をしてるのかなって。
大丈夫だ、きっとすぐに見つかる!…ってティナに言いながら、まるで自分に言ってる気がしたんだ。

だって、あいつは1人じゃ戦えない。
それなのに、一体何処に行こうとしてるんだ?。
そんな思いが何度も何度も頭に浮かんだ。
でも…ユカにはユカなりの考えがあって、危険を承知で1人で行動してるのかと思うと、それだけ本気なんだって分かる。

けど、いつからそう思ってたんだろうか。
いつ出て行こうって思ったんだろう。

考えても考えても答えは出なくて、どうすべきなのか気持ちが固まらない。いつの間にか夕日が沈んで夜になって、それでもいつもの自分には戻れなかった…。


「珍しいな。マッシュが1人で居るなんて」
「・・・・・・兄貴」
「その上、慣れない考え事か」
「・・・・・・・・」

座り込んでいる俺の横に立つ兄貴は、夜空を眺めて綺麗だなと話す。俺はそれを見てもいないのに、適当に相槌をうって返事をしていた。

「彼女は頑張り屋だからな。きっと何かあったんだろう」
「何かって何なんだ…?」
「最近少し元気が無かったじゃないか」
「何言ってんだよ、元気だったろ!俺達が行く前だって笑ってたんだ、あいつは…ッ」
「それはお前だからさ、マッシュ」
「俺だから?違う、あいつは皆に」
「弟ながら困ったもんだな、本当に。呆れるよ」
「そんな言い方しなくてもいいだろ!」

自分だけが分かってない状況に今が重なって、益々心が荒れていく。
勢いよく立ち上がり兄貴に視線を向ければ、相手は俺を見ながら聞いてきた。

「お前はユカの何なんだ?」
「俺はアイツの…保護者みたいなもんだ。きっと」
「まぁ、確かに違うとは言い切れないか」

相手を守りながら戦って、手伝うように旅をしてる。きっとこういうのは保護者なんだろうなって思ったから。

「しかし、その割には見えていないようだな」
「見てたさ!ちゃんと」
「だったら何故、彼女は今ここに居ないんだ?」
「それは・・・っ」

セッツァーに言われた時もそうだった。
俺はあいつがここに居ない理由を言えない。分からない。
だから、どうすればいいのかっていう答えを見つけられないんだ。

「マッシュ、知っていたか?ユカはお前と話す時、いつも笑顔だって」
「あいつはよく笑う奴だから」
「そこがもう既に違うんだ。お前の前だからさ、マッシュ」
「……俺の?」
「きっとお前が一番話し易いんだろう。何でも言える間柄、そしてあの子の考え方。だからこそ今回は言えなかったんだろうな」

兄貴の言いたい事が分からなくて、率直に聞き返せば益々呆れられた。
だけど、呆れられてもダサくてもいいから知りたくて、その答えを相手に求めると、ユカが以前話した言葉を兄貴が同じように言うんだ。

「迷惑を掛けたくない。だから言えなかったんじゃないのか?」

確かにユカはナルシェで言ってた。
大事だから、そうしたくないって。
でも、俺はあの時、ユカにこう伝えた筈だ。

“俺には迷惑をかける。それが大事にするって証拠だ”って。

思い出した途端、悩んでたのが馬鹿馬鹿しくなって笑えてくる。
だから自分のほっぺたを思いっきり強く叩いて大きく声を張った。

「アニキ!俺、決めた!ユカのことを探す!!」
「立ち直りが早すぎやしないか?」
「慣れない事したって解決しない!俺はいつもの俺じゃなきゃな!」
「感心するよ、そのメンタルには」
「だから、暫くメンバーから外れちまうけど、よろしくなアニキ」
「皆がいるから心配ないさ」

飛空挺が壊れて飛び立つことが出来ない今だからこそ、俺はユカを探しに行くことを決めた。行動できる時間は限られてるけど、それでも相手を探さなきゃ何も始まらない。後悔したくないからやるしかない。

「よしッ!!!俺、今からすぐに出発する」
「一人で行くのか?」
「いや、ガウも連れてってやるんだ。あいつ、ヘコんでたしな」
「だったら少しくらい食事をしたらどうだ?体力が持たないぞ」
「あー…いや、いい。何ていうか、腹減らないんだ、全然」
「…………それは余程重症だ」

きっと変に考え込んだせいだなって自分で言いながら自分を笑うと、兄貴はもの凄く大きな溜息をついてみせる。

「早く腹が空くようになるといいな…」
「ああ!それじゃあな、アニキ!ガウ連れて行ってくるぜ!」
「分かった。気をつけてな」
「了解!それから、ありがとな!!」
「どういたしまして。頑張れよ、マッシュ」

勿論だと意気込んで、走って飛空挺に乗り込みガウを叩き起こして旅支度をする。
ティナとカイエンに探してくると伝え、出る間際に鉢合わせたセッツァーに悪かったと一言謝ってから外に出た。

戻ってきたアニキとすれ違いざまに手を上げて挨拶を交わし、俺とガウは走ってフィールドを駆けていく。
だから俺達が出て行った後、アニキとセッツァーがこんな話をしていたなんて知りもしない---。


「世話の掛かる鈍感な弟だな」
「純粋といってくれないか」
「聞こえはいいが、それも紙一重だ」
「だったら君も同じだろう?ニヒルな悪役が似合いすぎる」
「あいつが勝手に勘違いしただけだけどな」
「そうなるように仕向けたのはセッツァーじゃないか」
「俺は知らないとしか言ってないぜ」
「本当に何も知らなかったら、そこまで落ち着いてはいられないと思うが?」
「だったらそっちもだろ」
「ギャンブラーとして洞察力に長けた君が、見逃す訳がないだろうと思っただけさ」
「念の為、あいつには金もアイテムもそれなりに渡しておいた」
「なる程。一応の安全は対策済みか。流石だな」
「それこそお互い様だろ。…とはいえアイツが何を探しにいったのかは俺も知らない」
「探し物か…」
「見つかるんじゃないか。騒がしい追い風も吹いたしな」
「あとは雲が晴れて太陽が上がるのを待つしかないか」
「そうだな。さぁてと、俺はぶっ壊れた飛空挺の修理しねぇとな」
「こっちもベクタに向けて準備でもするか」
「じゃあな」
「ああ」


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