オレンジの夕日が手元を照らし始めた頃。ふわりと舞うカーテン。 チェロップが窓から部屋へ入ってきた。 「お疲れ、」クザンがけだるげに声をかけた。「何もなかった、私も遊んでたかったな」 サボっていたと思われていたのだろう。彼女はクザンのことをよく知っているが、 ちゃんと仕事はしていた。 窓際に腰掛けるチェロップの細く伸びる四肢は、踊り子であった彼女に相応しい。 そっと抱きかかえて、定位置に座らせる。クザンの膝の上だ。 柔らかい髪を掬い上げれば、陽できらきら輝いた。チェロップの掲げる正義、 「輝く正義」そのものだと思うと、クザンの顔には恍惚の笑みが浮かぶ。 チェロップが踊り子であった時の姿は、三大将の中ではクザンが一番よく知っている。 無論、踊り子を買い漁っていたわけではない。仕事の合間や暇を見つけて、 酒場や激情に顔を出すと、よく見かけたものだった。 チェロップは人気者だった。クザンには高根の花に見えた。 物憂れそうな、何か届かぬものを欲す純粋なガラスのような瞳が、心を射抜いた。 もし氷であったなら、戻ることは到底不可能だったと今でも思う。 [mokuji] [しおりを挟む] |