誰かの忘れ物ですが

二振りの刀が寄り添うように置かれていた。



次々と順番に部屋の掃除をして行って、他とは大きさの違う襖の前に立った。
堂々と存在感のある大きな襖で誰もがここは大広間だとわかる。

スパーンと大きな襖を開けると、広い部屋のど真ん中に刀があった。
長さは違うけれどどこか似てる。

誰だよこんな所に忘れていったやつ。

部屋の掃除をするのにそこにあったら邪魔だろう。廊下に出すか。

中に足を踏み入れるとぶわっと埃のようなものが舞った。何年も掃除していないカビと埃だらけのエアコンをつけているような空気の汚さだ。

実際に暖房をつけているんだろう。もわっとしている。そして暑い。

こんなところで暖まれるわけがない。下手したら変な病気になるんじゃないか。

「…ん。」

2つの刀を持ち上げる。次第に手の平がじわりと熱が伝わり始めた。



刀が熱を持っている。


この部屋に置きっぱなしにするから熱が篭もってしまったんだな。こんな閉め切った場所だと俺が開ける前はもっと暑かったはずだ。

風通りの良い縁側に並べ、ベタベタと刀を隅々まで触りまくった。不思議なことに熱いのは片方だけだった。もう片方はむしろ冷たく感じる。

自分冷え性で手が冷たいからいくらか冷めてくれるかなと思ったが多分意味がない。

外も風が吹いているし一旦刀を置いてあの部屋の空気の入れ替えをしなければ。


再度大広間に戻ると俺の背後から強い風が部屋の中へと勢い良く流れた。
風のせいで乱れた髪が顔にかかり、とても痒い。

咄嗟に瞑った目を開けた先に、先程の汚い空気とは打って変わって部屋全体にキラキラしたものが舞っていた。

それらが弾けて漂っていた空気が消されていく。


「…はぁ。」

一気に清々しい空気になった。とても息がしやすい。

襖が大きいから空気がよく入る。
やはり新しい空気を取り入れないと人間の体には毒だ。

明るくなった部屋はシミや汚れ、埃1つもなく綺麗な状態のままだった。
こういう所は集まれる場所でもあるし、誰かが定期的に掃除しているのかもしれない。


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