小説あんすた | ナノ

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僕はプロデュース科のUNDEAD専属ダンス指導者だ。一年の時は普通科だった。だが、卒業式が終わって教室で一人イヤホンをせずに音楽を流していたその時に椚先生が僕の前に現れた。

あの人は『君はプロデュース科に来るべきだ。』なんて言った。僕が一人でダンスをしているところを見たんだって。空き教室でストレス発散として一心不乱に踊ってただけなんだけど。

まぁなんやかんやで勉強も飽きてきて暇だったから丁度いいと思い、二年に上がると同時に転科した。もう一人女の子が、なんてどうでもよかった。


「冬雅。」

「お疲れ、アドニスくん。」

「悪いな。」

レッスン室の窓から視線を外して扉に目を向けた。部活後、練習着で汗を拭かずにここに来たようだ。それももう見慣れているから近くに置いていたタオルを渡す。

「君だけだよ、練習したいって言うの。部活で疲れてるっていうのに。」

「いいんだ。冬雅とのダンスは楽しい。」

「ははっ、嬉しいなぁ。」

靴紐を結び直して水を飲む。巨大な鏡の前に僕が立つと続けてアドニスくんも隣に並んだ。ストレッチはもう済ませてある。

「新曲の振り付け覚えた?」

「大体は。」

「んじゃあ通そう。」

僕は踊ることが好き。見るのも好き。ダイナミックなアドニスくんのダンスはお気に入りだったりする。


「いいね。昨日より遥かにいい。」

「よかった。」

音楽を止め汗を拭う。順調に進んでいってる。

「大神達には教えないのか。」

…あいつらか。そういえば新曲の振り付け一度も見せてないな。それくらいサボってると。

「UNDEADは天才の集まりだから。」

僕がわざわざ迎えに行って教えるほど下手では無い。何回か通したら覚えて本番ではオリジナルも入れるくらいだし。放っておいても別に。

アドニスくんは何も言わず僕をじっと見ていた。

「あぁ、ごめんね。指導者として失格だ。後で皆集めるよ。」

これじゃあ僕が専属な意味がない。それでも無言を貫く。酷いこと言っちゃったかな。

「…いや、無理に教える必要はない。」

少し驚いてしまった。…アドニスくんもそんなこと言うんだ。


「なんでレッスンの日には必ず来てくれるの?」

ずっと思っていた疑問点をぶつけた。アドニスくんも無理してこなくていいのに。聞くつもりじゃなかったけど。

「それは、冬雅を…」

「僕を?」

言葉が途切れた。その続きが聞きたいんだけど。口を少し開けて固まっているアドニスくん。首を傾げるとハッと意識を戻して首を横に振った。

「なんでもない。俺は踊りが下手だからだ。」

「そっか。」

偉いねぇ。これよりも上を目指すのか。…アドニスくんはいけるよ。

だったら僕も頑張らないと。指導者の役割として僕が上に立ちたい。


「僕、UNDEADの専属辞めて他のユニットにもダンス指導していくことになったんだ。」

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