小説あんすた | ナノ

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「しゅ、手裏剣…!」

昼休み、噴水の近くのベンチで肩を並べた。忍くんの膝にはお弁当、手の平に一つの白い手裏剣を乗せている。

「ありがとうでござる!冬雅殿っ!」

クソつまんない授業の中、俺が紙で折った手裏剣。忍くんはこんなしょぼいものを嬉しそうに笑って喜ぶ。

なぜこんなに喜ぶのだろうか。

「いらなかったら捨てていーよ。」

「だ、ダメでござる!」

慌てて手裏剣を俺から遠ざけた。そんな無理矢理奪うなんてしないのに。

「なんで。」

胸元にそれを寄せる忍くん。


「冬雅殿から貰ったものは、全部拙者の宝物でござる。」

ブレザーのポケットにしまい込んでえへへ、と照れ笑いをした。俺はこの子の頭を撫で回す。

「かわい。」

「っん…?!冬雅殿、こ、ここ外でござるよっ!?」

当然、我慢出来なくてキスをした。咄嗟に離れようとした忍くんの後頭部を引き寄せて数センチの距離で見つめる。

「ふはっ、真っ赤。」

「だっ、だって、冬雅殿がっ!」

「ん、俺が何。」

「…な、何でもないでござるっ!」

忍くんをからかうのは面白い。照れたり焦ったりする姿をもっと見たいと思う。

忍くんの膝の上にあるお弁当を退かして額や頬に唇を落とした。ぎゅっと強く目を瞑り、俺のキスを受け止めている。

「…忍くん。」

「あ…冬雅、どの、」

ふに、と唇を親指で触れる。

外でこんなことしてる恥ずかしさなんて、もう忍くんの頭の中から消え去っているようだ。周りを気にせず俺しか見ていない。

涙目で頬を赤く染めた忍くんの唇に自分の唇を近づけた。



「あー、しのぶたち、なにしてるんですかー?」

「っ?!わ、わ、わぁぁあああっ!?!」

「……。」

忍くんはビクッと跳ね上がってそのまま走って行ってしまった。


「しのぶ、どっかいっちゃった…」

「…見てた?」

「はい!らぶらぶ、してましたー!」

噴水の前では控えよう。怖い。気づかなかった俺らも悪いが、いつの間にか居た深海が怖すぎる。

「忘れてくれ。」

「ふふ、わかりました!」

忍くんの弁当も持って立ち上がった。

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