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「…セックス事情?」
まさかそんな話がふられるとは思わなかったよ、摂津くん。しかもわざわざカフェでコーヒー飲んでいる時にさ、こんな話していいのかな…
まぁ時間も夕方の閉店間際だし、人いないから大丈夫なんだろうけど。
「稽古中に何度か腰に気ぃつかってたのは知ってっから、左京さんが下なのは把握済み。」
「えっ、痛そうにしてる?」
「多分大丈夫なんじゃね?」
…まじか。一応終わった後は必ずマッサージしてるが、効かなかった?
「んで、なんで急にこの話になるの。」
さっきまで普通に世間話してたよね…
「あー、いや、あのオッサンを満足させてんのかなって気になっただけ。」
「満足…?」
摂津くんが気まずそうに頭をかく。そういう反応されると気になる。
「…アンタんとこから帰ってきたオッサン、いつもボーッとしてんだよ。」
「…はい?」
「新聞開いて、コーヒー片手に持ってるけど、飲んでねぇし読んでもねぇ。最悪、コーヒーこぼしてんのも気づいてなかった日もあった。」
毎回朝に帰ってそんなことしてたのか、古市さん。起きた時はいつも通りだと思ってたけど…
「あれは軽くホラーだ。一人でやってんだぜ…死んでんのかと思った。」
「重症。」
冗談抜きに本気で改善すべきことだ。mankaiカンパニーで古市さんはまとめ役的な存在だから、皆心配してるよね。
「やっぱり俺が原因かな。」
「他に誰がいんだよ!」
「すみません…」
秋組のリーダーを怒らせてしまった。
「とにかく、ヤりすぎなのか、オッサンが満足してないかどっちかじゃねーの?」
「ダメだ、俺生きていけない…」
後者だったらショックすぎて。前者も反省しないといけないやつだし。
「実際、どっちから仕掛けてんの。」
「俺っす…」
「どんな風にヤってんの。」
「俺が我慢出来なくて、激しくします…」
「それだな。」
「それっすね。」
拷問だこんなの…セクハラだ…高校生相手に何言ってんだ俺、涙出てきた。
「オッサンの頼み事とか、聞いてないのかよ。」
「…そもそも頼み事なんて古市さんの口から聞いたことない。」
「気持ちも考えてやれって。」
「…はい。」
…終わりだ。もうダメだ。
「…ま、まぁ、俺も悪かった。」
「今日、どうすればいいの…」
「いつも通りに、な!」
焦っている摂津くん、珍しい。俺の今の顔が焦らせている原因なんだろうなって思う。そろそろ古市さんから連絡くる時間じゃないか?
「はっはっは。」
「えー、さて、俺は帰る…」
立ち上がろうとした摂津くんの頭を鷲掴みする。
「ありがとうね、貴重な話を聞けたよ。」
「あ、そっすか。」
青ざめた顔で頷いている。2人分のコーヒー代が足りるくらいのお金をテーブルに置いて店を出た。
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