先が怖し

「すみません!遅くなりました!」

パタパタと走ってくるのは一人の女の子だった。

「自己紹介してください。」

女の子はハッとしたように俺を見る。

「初めまして!プロデュース科二年のあんずです!」

「プロデュース科?」

聞いたことがあるような、ないような。新しく取り入れられたのは知っていたけどまさか女の子だったなんて。

「俺は海崎玲吾だよ。」

彼女は何度も頷いていた。

「貴方には今度こそイベントに参加してもらいますよ。」

「絶対?」

先生の目がギラギラしてる。

「当たり前です。どれだけのイベントに参加してないと思ってるんですか。」

「数えたことないなぁ。」

「今度こそ必ず出てもらいますから。」

なんでそんなに力んでるんだ。

「いやー、俺は遠慮し…」

「強制です。」

「えぇー…」

前までは無理矢理参加させなかったのに。


「もう、大丈夫ですよ。」

それは何に対しての大丈夫なのか。

「……。」

「企画も全てあんずさんが考えています。きちんと貴方の衣装も用意します。」

「は、はい!!頑張ります!!」

俺があんずちゃんを見ると背筋を伸ばした。

「皆も喜ぶと思いません?」

言い返せねぇ。

「…考えておきます。」

あんずちゃんは嬉しそうに笑った。先生も安心したように小さくため息をついた。…俺に期待してどうすんだよ。

「…んじゃあ、失礼します。」


最近日常化してきた生活が崩れてる。椚先生に頻繁に呼ばれるようになったのはこのためか…俺はなんとなく悔しくて走って帰った。

見とけこのやろー。

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