1人の少年

衣更真緒side


「…最悪だ。」

俺は廊下を走っていた。

生徒会の仕事溜まってて、ただでさえ皆との練習時間が削られるっていうのに、

教室に忘れ物する俺は本当アホだな。

急いで階段を駆け上がり、勢い良く教室の扉を開けた。


「…びっくりしたー。そんな力任せに開けたら、扉壊れるだろ…」

「…は?」

見たことないやつが机に突っ伏していた。

服装が私服で制服着てないし…これってもしかして…

「…ん?君誰?」

「それはこっちのセリフだっ!!お前誰だよ?!」

「まぁまぁ落ち着け。」

そいつはあくびをしながら身体を伸ばしていた。

「落ち着いてられっか!不法侵入だったら警察行きだぞ!!」

「…えー、それは酷いなぁ。」

頭をガシガシと掻く。顔はすげぇ整ってるけど…アイドル科では見たことないし…

スマホを取り出していざとなったら警察へ…

「…俺のこと知りたい?」


「…はぁ?」

また間抜けな声が出てしまった。

「…というか、ここ何年の教室?」

「に、二年だ…」

変な行動したら即電話してやる…

「…あれ、教室間違ってた。あー…だから先生いねぇのか。なるほど。」

警察に連絡してもいいだろうか。




衣更真緒side終
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「んじゃあ、君は二年?」

立って、ゆっくりと歩いていく。

めっちゃ俺を睨んでくるんだが。

「…そうだけど。」

「ふーん…」

まぁ、あまり興味ないけど。

…そろそろ先生怒るよなー。

「俺行かないと…だから、そこ退いてくれる?」

「…いや、ダメだ。」

「…え?」

俺なんかしちゃったかな。こりゃ困った。

「…名前教えてくれ。」

扉の前に立ちはだかって全然通してくれない。

「えー。君の名前を教えてくれたら考えるけど。」

目の前のやつが目を見開いた。

「…衣更真緒。」

ここで素直に名乗る人初めて見たかも。こいつ、いい人じゃん。

「今日は機嫌いいから俺の名前教えるね。」

多分てか絶対しらないと思うけど。


「海崎玲吾。…アイドル科、三年。」

衣更くんの頭に手を置いた。

「…え、は…?三年…?」

「そう、三年。」

驚いてる姿が面白くて頭を撫でる。

「で、でも、制服着てないだろ…」

「あー、着替えるのが面倒くさくてさ。」

まだ疑い深い顔をしていた。

「証明するものなにもないしなぁ。とりあえず、今日のところは見逃してくれたら嬉しい。」

衣更くんと扉の隙間を通って教室を出た。

「あ!おい?!」



「また会えたらいいね、衣更くん。」

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