ばかばか

遊木真side


「そんな、僕なんか…」

…褒められるのはやっぱり慣れない。そこはありがとう、と言うべきなんだろうけどなぜかネガティブになってしまう。せっかく褒めてくれたのに。

「もっと自分に自信もっていいと思うぞ、俺は。」

「…え。」

何も考えられなくなった時に頭を撫でられハッとする。同時に身体中が熱くなる。

「遊木くんの声も好きだしダンスなんかコツ掴めば大丈夫。」

あ、笑った…

「は、はい。」

海崎先輩を見たら頷くことしかできなくて。

「あ…そ、そうだ!最後に一回通してみま…うわぁっ?!」いきなり立ち上がったせいでよろめいてしまった。

「痛っ…」

でも身体はどこも痛くなく代わりに海崎先輩の声が近くに聞こえる。

「いてて…は?」

目の前には海崎先輩の顔。え、なんで…?なんで海崎先輩が目の前に?!ああああああああっ、どうしようどうしようどうしよう?!とにかくっ…ちっ、近い…!!

鼻と鼻がくっ付いてしまうほどの距離。僕は状況が掴めず動けなかった。

「遊木くん?」

「…え?」

返事する間もなく、力が抜け海崎先輩に全体重を預けてしまった。

「す、すみませ…力入んない、です…」

「大丈夫?」

耳元で海崎先輩の声がする。その声にビクッと反応してしまった。

「…っはい。」

あーもう恥ずかしい泣きそう。

「仕方ないなぁ。」

「うぇっ?!」

海崎先輩が僕の腰に手を回したと思ったら視界が反転した。

「あ、えと…」

海崎先輩は床に両手をつけ肘を立てる。絶対顔真っ赤だ、僕。

「本当に大丈夫?…なんか、顔が熱いよ。」

真上にいる海崎先輩がスッと僕の頬を撫でる。

「っ大丈夫です、から…言わないで。」

改めて顔が赤いと言われると恥ずかしさが増す。顔を逸らして口元を手で隠した。

「少しからかいすぎたかな?」

海崎先輩に腕を引かれ身体を起こす。ごめんね、と僕に謝ってきたから。

「……。」

無言で海崎先輩の胸ら辺を殴ってやった。ただ単に恥ずかしくて口が開けなかっただけなんだけど。

「ごめんって。」

力が入らなくて全然威力なかった。




遊木真side終

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