警戒

「……。」

「……。」

「…えっと?」

今Trickstarの氷鷹くんに腕を掴まれ見つめ合ってる。まず何か話そうよ。急にレコーディング室に入ってきて無言で腕掴まれても困るんだが…

「部長、この人借りていく。」

氷鷹くんは目を逸らし、バッと日々樹を見た。

「…おやおや?そんな怖い顔をして玲吾をどこに連れて行く気ですか?」

反対側の腕を日々樹に掴まれた俺はどうすればいいんだ。

「Trickstarのレッスンをしてもらう。」

「……。」

俺を挟んで会話するな。

「私たちの所には来てくださらないのですか、玲吾。」

一瞬見えた悲しい顔。…ばれてんぞ。

「俺を捕まえて掻っ攫って行けば抵抗なしに行くけど?」

日々樹は目を見開いて次第に笑顔になった。

「Amazing!今すぐにでも実行させていただきたいのですが…」

チラッと氷鷹くんを見た。

「…今日は譲りましょう!」

少し上機嫌になったようで。


「それでは今度。必ず、貴方を連れて行きます。」

俺の唇に日々樹の唇が触れた。



「…あの。」

移動中全然口を開いてなかった氷鷹くんが初めて喋った。

「ん?」

そんな気を遣うようなことしたかなぁ。

「部長と付き合ってるんですか。」

「…え?」

何を言ってるんだ君は。氷鷹くんは至って真剣な顔してるし思わず笑ってしまった。

「…?な、なんだ?」

今度は焦ってる。

「ふはっ、付き合ってないよ。」

「え。」

「そんな風に見えた?」

あ、見えるか。

「そりゃあ。」

やはり氷鷹くんも即答だった。

「俺は皆にあんな感じだよ。」

目を見開いて俺を見る。

「キスも…」

「うん。普通にできる。」

「…?!」

顔を一気に近づけた。



「抱いてほしいと言われれば抱くし、俺は何でもできるよ。」

今俺はどんな顔をしてるんだろう。真顔なのは間違いない。氷鷹くんは言葉を喉に詰まらせてるように思えた。

「引いた?」

「え…あ、いや…」

なんとも曖昧な返事。

「…ふ、ごめんな。」


…警戒、されたか。

prev / back / next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -