スッキリ

のびのびと歌った。いつも通り自分が楽しければそれでいいかなって。

「え。」

歌い終わって目を開けるとレコーディング室の外から、たくさんの人数の人が集まっていた。

なにこれ。なんで。

「おっと、すみません。校舎に流すスイッチを切ること忘れてました。」

「嘘下手。」

棒読みだったぞ。もう一度外を眺めると知ってるやつや知らないやつもいた。…椚先生、仕向けたな。

「聞いてくれて、ありがとう。」

マイクに向かってそう言うと盛り上がる皆。ライブ会場かここは。

気持ち良く歌っていたからすげぇ恥ずかしい。

「急にごめん。えっと…三日間、朝から学校にいるんで楽しもう。」

皆いいやつだなぁ。

「さぁ、授業が始まっている時間ですよ。速やかに戻ってください。」

皆を追い出してる。椚先生って鬼畜か。戻る際に俺に笑顔で手を振ってくれた人もいた。

「頑張る。」

これまた学校全体に響いた。

「ウォーミングアップはいいでしょう。本番はこれからですよ。」

椚先生はカチャ、と眼鏡を上げて目をギラつかせた。



「つっかれた…」

厳しいレッスンが終わった後レコーディング室に一人椅子に座っていた。椚先生は用事があるみたいで俺に鍵を渡して帰った。ため息をついて机に項垂れる。

初日からすげぇ死にそうになった。ここまで衰えていたとは。毎日の継続が大切なんだな。


「お疲れ様です。」

耳元で声が聞こえた。

「いつからそこにいたんだよ…」

普通に驚いたわ。

「いつからでしょう?」

「ずっと見てたのか?魔法使いさん。」

「魔法使いさん…いい響きですねぇ!」

こいつが動くたび揺れる長い髪。

「日々樹。」

「はい、なんでしょう?」

くるっと振り返り、俺の目の前に青い小さな花を差し出した。

「こっちのセリフ。これ何の花?」

日々樹は優しく笑った。

「ワスレナグサでございます。」

全然聞いたことない。

「さぁ受け取ってください、玲吾。」

「…ありがとう。」

よくわからないやつだな。

「ワスレナグサの花言葉はご存知ですか?」

花言葉?

「…知らない。」

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