楽しかったね

音楽室全体が静かになった。

俺は小さく息を吐く。

「あー、楽しかった。…な?」

同意を求めれば大神くんは目を逸らして頷いた。無理矢理感が半端ないけど演奏中は笑顔で弾いてくれたし。俺は嬉しいな。

「大神くんはギター好きなんだね。」

「は?」

「楽しそうに弾いてるから。違う?」

「…好きなのは当たり前だろ。」

思わず笑ってしまった。

「?!ってめぇ…!!」

「ごめんな…まさか、こう返ってくるとは思わなかったんだ。」

何が何だかわかってない様子。

「演奏中の大神くん、すげぇ好き。」

「は、はぁっ?!」

大神くんは目を見開き頬がほんのり赤くなった。

「一緒にギター弾いて大神くんの印象変わったよ。大神くんとが一番楽しかった。」

俺もつられて笑顔になるほどに。

「また一緒に弾きたい…君が迷惑じゃなければ。」

大神くんの前に手を差し出す。その手をジッと見つめていた。やっぱり握らないかな。



「いいぜ。俺様が飽きるまで付き合わせてやる…!!」

俺の手を力強く握る。

「…ありがとう。」

これで距離も縮まってたらいいな。




――――――――――――――――――




「…え、バスケ部の助っ人?」

『お願いだっ、玲吾!』

家に帰ったら突然守沢から電話がかかってきた。何かと思えば。

『部員の一人が怪我してしまってな…玲吾、バスケできるだろ?どうしても明日、一人埋め合わせが必要なんだっ!』

ため息をついて少し考えた。

「仕方ないな…」

『…!ほんとか?!』

嬉しそうに話す守沢。

「うん。まぁ、元々学校行こうと思ってたから。」


『…玲吾に会える。ありがとう!』

「ははっ、そうだな。」

確かに守沢とはずっと会ってなかった。他にも会ってないやつはいるんだが…別に気にしないというか。

『いいところ見せるぞっ!』

「はいはい。期待してる。」

守沢のバスケしてる姿も数回しか見てないから楽しみだ。


『…玲吾。』

「ん?」

急に守沢の声のトーンが下がって緊張してるように思えた。少しの沈黙があった。

『なんでもない。すまないっ!』

「…そっか。」

守沢が俺に対して何を言いたかったのは定かではないが、気にしてないフリしとく。

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