「ただいま。」

家の中は真っ暗だった。玄関の扉を開けても、静まり返っていて明かりも何もついていない。

リビングに行くと大量の紙が床やテーブルに散らばっていた。そしてソファに横になって目を瞑っているレオがいる。鉛筆も無造作に落ちていた。

近くにあった紙を拾う。暗い状態であまり見えなかったが、旋律と音符。

あぁ、またメロディが思い浮かんだのかと思いながら鞄を置いて紙を拾っていく。

でも、紙の大半は黒く塗りつぶされていた。

「レオ。」

まとめた紙をテーブルの上に置いてから傍にしゃがみ込みレオの肩を揺する。何度も呼ぶうちにゆっくりと目を開けていく。

「…柊斗。」

「ただいま。待っててくれたの?」

「遅い。」

学校終わって走ってきたんだけどな、と笑う。レオの今の表情が見えない。

「ご飯食べた?」

横に首を振ったレオの額にキスして立ち上がる。電気をつけてキッチンに向かう。ずっと書き留めてたのかな。そうやってご飯を食べることも忘れてたら体力も落ちる。

俺が毎回料理を振舞っているけど、一人になるといつも食べない。もし俺がいなくなったらやっていけるのか。



「レオ?」

何も言わず隣に立つ。手伝ってくれるわけじゃなさそうだし…

「…はやく。」

「あぁ、ちょっと待ってね。」

なんだ。お腹すいてたのか。

「ち、違う!」

腕を掴まれる。びっくりしてレオを見ると、顔を赤くして俺を見つめていた。

(あれ、この表情…)



「えっち、したい…」

恥ずかしそうに目を逸らした後、とんでもない言葉が聞こえてきた。

「ご飯は?」

驚きすぎて雰囲気に合わないことを言ってしまった。俺カッコ悪い。

「…えっちしたら食べる。」

なんでセックスをえっちって言うんだこの人。いつもレオの言動が読めない。振り回されている感じがする。

それは悔しいなぁ。







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