ここの本丸に宗三左文字が来たのは最近のことだった。
あまり刀を増やさない俺が、政府からの頼み事という脅しで久々に鍛刀して、光に包まれていたのがこいつ。
隣で手伝ってくれていた小夜がとても喜んでいたから、俺も嬉しかった。
だが、過ごしていくうちに大きな問題が発生した。
それは俺を主と認めていないということだ。
たかが1ヶ月、されど1ヶ月。
嫌味や怒りも耐えてきた。時間が経てば…なんて呑気に考えていたが、そうはいかないみたい。
先週、ついに言われてしまった。『僕は貴方を主だと思ったことはない』と。はっきり。
これは流石に辛い。毎日話しかけて、住みやすい場所になってほしいと思っていたのに、全てを否定されたんだ。
他のみんなは俺のことをフォローしてくれた。怒ってるやつもいた。
『もう、いいや。』
何やってんだろ俺。あほらし。最初から主と見てないのだったら、これ以上行動したって無駄なだけだ。
俺は宗三への思いがスッと消え、次の日から日課になりつつあった宗三の部屋に行くことをやめた。話しかけるのも、隣に座るのもやめた。
『貴方は審神者向いていないのかもしれませんね。ただ、政府には向いている。』
この政府の言葉も、宗三に言われた後だった。実質、他の本丸より出陣は積極的に行っていないし、内番ばっかやらせている。お陰で心の優しいやつらばっかりだよ。庭はもはや花畑状態だ。
確かに、そうだなって思う。自分が認める。もうそれはアウトだろう。だから、俺は『辞めようかな。』なんて政府の人に言っていた。
その時ガタンと部屋の外から聞こえて、誰か聞いてたなとあまり気には留めなかった。どうせ全員には言うんだし。
そんなこんなで今日の朝、同田貫が戦に行きたいと申し出た。こういうことはよくある事だから、いつものように出陣先は俺が決め、隊員はみんなで決めてもらった。
基本ここの本丸は、申し出たやつが隊長となる。他に行きたいやつ、必要なやつ、作戦も自分たちで考えさせる。それが俺のやり方。考える力もつき、みんなは必ず軽い傷で帰ってきてくれる。
そして、同田貫は驚くことに宗三を連れていくと言った。同田貫に合わせた場所を選んだからハードルが高すぎだと言ったが、宗三が行きたいと同田貫に言ったらしい。珍しいことだった。何回か人の身体に慣れさせるために指名してたが、自分からということはなかった。隊員も危険だと思ったらすぐ帰ると言ったし、意見を尊重して送り出した。
「…は?宗三が重傷?」
ドタバタと廊下を走っている音が聞こえ、審神者部屋の扉が壊れるくらい強く開けられたと思ったら、同田貫に衝撃な内容を知らされた。
「なぜ止めなかった!」
手入れ部屋へと一緒に急いで足を進める。
「検非違使が現れて戻ろうとした!だが、あいつ独断で飛びかかっていきやがったんだッ!」
同田貫が言うには、指示を無視して1人で突っ走ったらしい。
…なんで。
手入れ部屋に入ると、宗三以外は軽傷から中傷だった。アホ宗三は布団に横たわって気を失っている。みんながボロボロになって帰ってくるのは初めてに近かった。
「無事か?他に痛いところは?」
「ありませんよ!ありがとうございますっ!」
やっと他の手入れを終わらせ、真ん中にいる宗三に目をやる。手入れが終わったやつは各部屋に戻っていって、残ったのは俺と宗三だけ。
正直ため息が出そうだった。そんなに俺が嫌なのか。自分が折れてまでここに居たくなかったのか。多分、どっちもなんだろう。
手入れして、目を覚ましたら好きなようにさせよう。
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