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俺、漫画家してます。主にBLやってます。世間では無名?一部にはどの本も好評いただいてます。そして俺は現代っ子なので、デジタルです。

今、それどころではありません。

「誰がここにトーン貼れっつったんだよクソが!!」

「ひぃぃ!!すみませんすみませんっ!!」

えー、暴言吐いたのは俺です。許して。締切間近になるとこうなるんだ知ってるよね?

「うぅ、早く通常運転の湊さんに戻ってほしい…」

「もう無理死にそう」


「無駄口叩いてる暇あったら手ェ動かせやボゲゴルァ!!」

「はいぃ!!」

タイムリミットは後3時間。あと何枚出来てない?

「…ぶっ殺す。」

独り言のつもりが全員の耳に入ったみたいだ。更にスピードが上がった。あぁ、これなら間に合う…



「湊よ、捗っているかね。」

この場には似合わない元気な声。1人だけニコニコしながら俺のデスクの横にやってくる。

「……。誉、さん…」

…締め切り前は来ないでって何度も言ってますよね。聞いてましたか。なんで来るんですか。

「うむ、空気が悪い。これでは何も思い浮かばないだろう。換気でもどうだ。」

「お気持ちは嬉しいですが、何もしないでいただきたいです。」

途端にシュンと小さくなった。うっ、と言葉に詰まってしまう。俺はこの顔に弱い。素直な人だからハッキリ感情表現してくれる。嬉しい。

「…はぁ。」

けど、今の俺は絶対誉さんを傷つける。わかってるから来たらダメだって言ったんですよ。

「…すまない。」

あーもう上手くいかない。一旦落ち着こう。こんな事で手放したくない。

「ここ座ってください。」

椅子を引っ張り出して隣に置く。椅子と俺を交互に見て目を輝かせた。

「見てていいのかい?」

「気色悪いとか趣味悪いとか思わないんだったらいいですよ。」

「っ思わないに決まってるだろう!湊が身を削って完成させる作品なのだから!」

腕を大きく振って最大の表現をしてくれる。俺が今描いてるの素っ裸で激しく揺さぶってるとこですけど。普通の人なら目を逸らすシーンなのに誉さんは背筋を伸ばして興味津々に画面を見ている。

よし、このまま早く終わらせてご褒美でも貰っ…


「せ、先生っ…!大事件です!」

「…あぁ?」


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