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「はぁあ?!挿入シーンにダメ出し食らっただと?!」

「今メールで『雰囲気がない、やり直せ』と来ました!」

「それを今言うのかよあの野郎…っ!!」

椅子が後ろに引く音と同時に男のアシスタントも立つ。俺が顎で無駄に広いスペースに行くように合図する。頷いた彼が自然な動きで移動した。

よくある事だ。俺らがポーズのモデルになること。そりゃあ体位やキスも全部フリだけど。

「…誉さん、これから俺とこいつがやるポーズ撮ってくれませんか。」

「私がっ?!」

資料用のデジカメを渡してアシスタントの方へ行く。誉さんには申し訳ないけど他のアシスタントは手が離せない。

ぱっぱと恥ずかしがる様子もなく無表情、むしろ死にそうな顔で床に寝そべるアシスタント。その上に跨って顔の横に手をつく。攻めが少し強引だからもっと健気に…

手足の位置や顔の向きなどを調整させる。

「これから一連の動きするので合図したら、」


「嫌だね。」

「…は?」

みんなの手が止まった。腕を組んで仁王立ちの誉さんを見上げる。下にいるやつが終わったと悟った顔していた。

「あ、あああ有栖川さんっ今ならまだ間に合います!」

よく分かってるねアシスタント達よ。

「…邪魔しに来たんですか。」

寝不足で痛む頭を抑えながら立ち見下げる。

「違う。こればかりは嫌なだけだ。」


「何が嫌なんですか…」

誉さんには向けたことがない視線と声。これでも控えてるつもりだった。ほかのヤツらには汚い言葉を使ってるだろう。意識すればするほど睨みつけてしまう。

「っ湊だって、酷すぎるぞ。」

「あぁ?」


「私以外の誰かと偽りでも触れ合う所を撮れなんて出来るわけがないだろうっ!」

体の方向を変えてここを出ていこうとした誉さんを咄嗟に掴もうとして空振りしてしまった。それを見た扉の近くにいたアシスタントが扉の前に立ちはだかってくれた。

「どきたまえ!!」

「今退いたら多分殺されますから…!」

よくやった。後でなんかあげるよ。

「待ってください誉さん。」

肩を震わせた後、ぎこちない動きで顔だけ振り返った。俺の頭がおかしいのかわからないが、嫉妬してますって聞こえた。

「誉さんならいいんですね?」

「…へ、」

早足で歩み寄って手を取る。横になっているアシスタントを睨むと即座に場所を空けた。そこに座り込む俺を見て誉さんは焦りの表情が出てきた。

「相手、お願いします。」

「な、なななにを言って…!」

無理矢理座らせて後ろに押し倒す。下でワーワー言いながら俺の肩を押している。あー面白い。

「誉さんの気持ちはよーくわかりました。後でじっくり聞き出すんで今は犠牲になってください。」

「ギャーッ!!」

原稿はほとんどアシスタント達が頑張ってくれた。俺が誉さんにちょっかいを出しているのをアシスタントは見て見ぬ振りだった。

さて、さっきの続きをしながら1から全て話してもらおうか。




おわり


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