▽ 11-4
side ?
ずっと昔から大切だった女の子。
できることなら一生隣にいたかった。
オレの手で守ってあげたかったし、幸せにしてやりたかった。
時計の針が止まったオレと、前に進まなければならないなまえ。
よく笑う子だったなまえが、オレかいなくなってからはどこか影を背負うようになっていった。
その姿を見ていると、何もしてやれないことが歯痒かった。そんな自分自身にどうしようもなく腹が立った。
そんななまえをずっと隣で支えていたのは、彼女と同じくらい大切だと思えるもう一人の幼馴染み。
羨ましかった。
なまえと同じ時間を生きることのできる零のことが。
涙を流すなまえを抱き締めることができるあいつが心の底から羨ましいと思った。
悔しい。
自分の手で守りたかったなまえを、例え相手が零だとしても託したくなんかなかった。
けれど・・・・・・、
やっぱり二人はオレにとって特別だから。
二人にはいつも笑っていて欲しい。
それは紛うことなきオレの本音だから。
あいつらが悲しむ姿なんて見たくなかった。
ましてその理由が自分だなんて・・・・・。
小さなすれ違いで傷付いていた二人を見ながら、そんなことをずっと考えていた。
だからこそ、なまえと零が揃って会いに来てくれたことは言葉で表すことができないくらい嬉しかったんだ。
「お前が何よりも大事にしてきたなまえのこと、今度は俺が誰よりも幸せにするから。
だから見守っててくれ」
なぁ、零。
昔のオレはお前が相手でも負ける気はなかったよ。
頭を下げる零の姿を見て、悔しく思った。けれど同じくらい嬉しいんだ。
きっとこれから先、二人が歩む道には困難も多いだろう。
素直じゃない二人だから。
ぶつかって喧嘩することも多いだろう。
まだまだ泣き虫ななまえがオレを思い出して泣くことだってあるだろう。
優しい零はそんななまえを見て、また胸を痛めるのだろう。
それでも・・・・・・・・・、
二人の未来が幸せで満ち溢れたものでありますように。
心からそう願わずにはいられなかった。
*
目の前で揺れる薄紫の花弁。
シオンの花言葉。
『追憶』『君を忘れない』
なまえが選んだその花に、自然と目尻が下がった。
「こっちに来た時は、譲らないからな。零」
願わくば、彼らがその瞬間まで笑顔でいられますように。
Fin
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